今回は「福祉行財政と福祉計画」の後半戦、福祉計画です。
そもそも福祉計画とは
社会福祉計画(ソーシャルプランニング)という社会福祉援助技術
の一つです。
福祉計画を展開していくためには、地域によって必要なニーズが異なるため地域住民の意見を考えながら行う必要があります。
また福祉計画と言っても
- 地域福祉計画
- 老人福祉計画
- 介護保険事業計画
- 障害者基本計画
- 障害福祉計画
- 次世代育成支援行動計画
- 子ども・子育て支援計画
- 障害児福祉計画
に分類されます。
地域福祉計画
策定は努力義務となっています。
市町村が策定する「市町村地域福祉計画」と都道府県が策定する「都道府県地域福祉計画」があります。
市町村地域福祉計画
計画期間は概ね5年、ただし3年で見直すことが適当とされています。
策定にあたっては、児童福祉や高齢者福祉といった専門機能を有する社会福祉法人や民生委員、児童委員が参加することが望まれています。
計画の策定・変更は地域住民の意見を反映させ、内容の公表に努める必要があります。
都道府県地域福祉計画
上記の
市町村地域福祉計画の達成を支援する見地
から策定されます。
策定にあたっては、都道府県社会福祉協議会や共同募金会、そのほか社会福祉関係団体が参加することが望まれています。
計画の策定・変更は公聴会の開催など住民その他の者の意見を反映させ、内容の公表に努める必要があります。
老人福祉計画
1990年「老人福祉法」の一部改正により策定が義務化されました。
これも地域福祉計画と同様に「市町村老人福祉計画」と「都道府県老人福祉計画」があります。
市町村老人福祉計画
市町村介護保険事業計画と一体のものとして策定しなければならない
という規定があります。
また、上記の市町村地域福祉計画やその他の福祉計画と調和のとれたものにする必要があります。
都道府県老人福祉計画
都道府県介護保険事業計画と一体のものとして策定しなければならない
という規定があります。
また、上記の都道府県地域福祉計画やその他の福祉計画と調和のとれたものにする必要があります。
なお2021年の法改正によって
老人福祉事業に従事する者の業務の効率化及び質の向上
のために講ずる措置を定めるよう努めることになりました。
介護保険事業計画
1997年「介護保険法」により「市町村介護保険事業計画」と「都道府県介護保険事業計画」の策定が義務化されました。
どちらも
3年を1期として、老人福祉計画と一体のものとして作成
しなければなりません。
市町村介護保険事業計画
これには
地域密着型サービスなどの必要利用定員総数やサービスの種類ごとの見込み量の確保
のための方策を定めるよう規定されています。
また市町村地域福祉計画や市町村老人福祉計画との調和が保たれなくてはいけません。
都道府県介護保険事業計画
市町村介護保険計画と同様に、調和が保たれなくてはいけません。
障害者基本計画←国が策定
1993年「障害者基本法」の制定に伴い障害者基本計画の策定が義務化されました。
2002年に重点施策実施5ヵ年計画(新障害者プラン)が策定されました。
これは
2003年度〜2007年度までの5ヵ年で、重点的に実施する施策の目標設定
のことです。
2008年に新たな重点施策実施5ヵ年計画が策定されました(2008年度〜2013年度)
2013年に障害者基本計画(第三次)が策定されました(2013年度〜2017年度)
直近では2018年に障害者基本計画(第四次)が策定されています(2018年度〜2022年度)
こちらも「市町村障害者基本計画」と「都道府県障害者基本計画」があります。
市町村障害者基本計画
策定にあたっては
- 障害者基本計画(国)及び都道府県障害者計画を基本とする
- 障害者の状況等を踏まえなければならない
と規定されています。
都道府県障害者基本計画
策定にあたっては
障害者基本法の合議制の機関の意見を聴かなければならない
と規定されています。
また策定・変更した場合は、遅滞なく厚生労働大臣に提出しなければなりません。
障害福祉計画
障害者総合支援法において規定されています。
こちらも「市町村障害福祉計画」と「都道府県障害福祉計画」があります。
市町村障害福祉計画
各年度における指定障害福祉サービス、指定地域相談支援などの必要な見込み量を定める規定があります。
また市町村障害者計画や市町村地域福祉計画と、調和が保たれなくてはいけません。
都道府県障害福祉計画
策定にあたっては都道府県障害者基本計画と同様に
障害者基本法の合議制の機関の意見を聴かなければならない
と規定されています。
次世代育成支援行動計画
2003年に成立した「次世代育成支援対策推進法」で規定されました。
これにより国は
地方公共団体及び事業主による行動計画の策定に関する指針(行動計画策定指針)の作成を義務化
しました。
この行動計画策定指針に則して、「市町村行動計画」と「都道府県行動計画」が策定されます。
また企業が事業主として策定する一般事業主行動計画、国及び地方公共団体の機関等が策定する特定事業主行動計画も規定されています。
子ども・子育て支援計画
2012年「子ども・子育て支援法」で
国(内閣総理大臣)は子ども・子育て支援のための施策を総合的に推進する基本指針を定める
と規定されています。
これまでと同様に、国の指針に基づいて「市町村子ども・子育て支援事業計画」と「都道府県子ども・子育て支援事業計画」が策定されます。
障害児福祉計画
児童福祉法の改正によって2018年から策定されることになりました。
「市町村障害児福祉計画」と「都道府県障害児福祉計画」があり、
どちらも市町村(都道府県)障害福祉計画と一体のものとして作成できる
という特徴があります。
同時に
市町村(都道府県)障害者計画や地域福祉計画と調和が保たれたもの
でないといけないと規定されています。
まとめ
以下はそれぞれの計画の比較表です。
名称 | 個別の計画 | 特徴 |
地域福祉計画 | 市町村地域福祉計画 | 概ね5年(3年で見直し)、地域住民の意見を反映させ、内容を公表する。 |
都道府県地域福祉計画 | 都道府県社会福祉協議会の参加が求められる。策定・変更する場合は公聴会を開き、内容を公表する。 | |
老人福祉計画 | 市町村老人福祉計画 | 市町村介護保険事業計画と一体のものとして作成。市町村地域福祉計画との調和を保つ。 |
都道府県老人福祉計画 | 都道府県介護保険事業計画と一体のものとして作成。都道府県地域福祉計画との調和を保つ。 | |
介護保険事業計画(3年1期) | 市町村介護保険事業計画 | 市町村老人福祉計画と一体のものとして作成。市町村地域福祉計画との調和を保つ。 |
都道府県介護保険事業計画 | 都道府県老人福祉計画と一体のものとして作成。都道府県地域福祉計画との調和を保つ。 | |
障害者基本計画 | 市町村障害者計画 | 障害者基本計画及び都道府県障害者基本計画を基本として、障害者の状況を踏まえて作成する。 |
都道府県障害者計画 | 障害者基本法の合議制の機関の意見を聞く。 | |
障害福祉計画(3年1期) | 市町村障害福祉計画 | 市町村障害者計画、市町村地域福祉計画との調和を保つ。 |
都道府県障害福祉計画 | 障害者基本法の合議制の機関の意見を聞く。 | |
次世代育成支援行動計画(5年1期) | 市町村行動計画 | 2003年の「次世代育成支援対策推進法」で国が策定する基本指針(行動計画策定指針)に卸して作成する。 |
都道府県行動計画 | ||
一般事業主行動計画 | 企業が事業主として策定する。 | |
特定事業主行動計画 | 国及び地方公共団体の機関等が策定する。 | |
子ども・子育て支援計画(5年1期) | 市町村子ども・子育て支援事業計画 | 2012年の「子ども・子育て支援法」で国が策定する基本指針の卸して作成する。 |
都道府県子ども・子育て支援事業計画 | ||
障害児福祉計画 | 市町村障害児福祉計画 | 市町村障害福祉計画と一体のものとして作成する。市町村障害者計画や市町村地域福祉計画との調和を保つ。 |
都道府県障害児福祉計画 | 都道府県障害福祉計画と一体のものとして作成する。都道府県障害者計画や都道府県地域福祉計画との調和を保つ。 |
- 老人福祉計画⇄介護保険事業計画
- 障害福祉計画⇄障害児福祉計画
が一体のものとして作成されているのがわかります。
終わり
今回はここまでです。
福祉計画は
国⇄都道府県⇄市町村
がメインとなり、事業主が関わってくる場合もあります。
余裕があれば各計画の作成・変更した時の提出先も覚えておくと、どんな問題にも対応できます。
提出先は今回省略しています。
次回から「相談援助」分野をまとめていく予定です。