悪玉コレステロールの脅威、高コレステロール血症:その症状、原因、そして対策のすべて
高コレステロール血症は、血液中のコレステロール値が高い状態を指します。自覚症状がないまま進行し、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気を招く可能性があるため、「沈黙の病気」とも呼ばれます。
しかし、高コレステロール血症は、適切な対策を講じることで予防や改善が可能です。この記事では、高コレステロール血症の症状、原因、そして具体的な対処法や予防法について、最新の医学的知見に基づき詳細に解説します。
高コレステロール血症ってどんな病気?
コレステロールは、細胞膜やホルモンの材料となる脂質の一種で、体にとって必要な物質です。しかし、血液中のコレステロール値が過剰に高くなると、血管の内側にコレステロールが蓄積し、動脈硬化を引き起こします。
動脈硬化は、血管が硬く狭くなることで、血液の流れが悪くなる状態です。心臓や脳などの重要な臓器に血液が十分に届かなくなると、心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気を引き起こす可能性があります。
高コレステロール血症は、大きく2つのタイプに分けられます。
- 原発性高コレステロール血症:遺伝的な要因が大きく影響するタイプで、家族性高コレステロール血症などが含まれます。
- 二次性高コレステロール血症:生活習慣や他の疾患(糖尿病、甲状腺機能低下症など)が原因となるタイプです。
⚠️ 高コレステロール血症の症状:沈黙のうちに進行する危険
高コレステロール血症は、初期段階では自覚症状がないことがほとんどです。しかし、放置すると動脈硬化が進行し、様々な臓器に障害を引き起こす可能性があります。
- 狭心症:
- 運動時や興奮時に胸が締め付けられるような痛みを感じる
- 痛みの持続時間は数分程度で、安静にすると治まる
- 狭心症を繰り返すと、心筋梗塞のリスクが高まる
- 心筋梗塞:
- 冠動脈が完全に詰まり、心筋が壊死する
- 激しい胸の痛み、呼吸困難、吐き気、冷や汗などの症状が現れる
- 突然死の原因となることもある
- 脳梗塞:
- 脳の血管が詰まり、脳細胞が壊死する
- 手足の麻痺、言語障害、意識障害などの症状が現れる
- 後遺症が残ることもある
- 末梢動脈疾患 (PAD):
- 足の血管が詰まり、歩行時に足の痛みやしびれが起こる
- 重症化すると、足の壊疽(えそ)を起こすこともある
- その他:
- 脂肪の塊(黄色腫)が皮膚にできる
- 腱黄色腫(アキレス腱の肥厚)が現れる
これらの症状は、高コレステロール血症が進行して動脈硬化が重症化した場合に現れることがあります。早期発見・早期治療が重要です。
高コレステロール血症の原因:遺伝、生活習慣、基礎疾患の複合的な影響
高コレステロール血症の原因は多岐にわたり、以下のような要因が考えられます。
- 遺伝的要因:
- 家族性高コレステロール血症 (FH):LDL受容体遺伝子の異常により、LDLコレステロールが非常に高くなる遺伝性疾患
- その他の遺伝的要因:複数の遺伝子が関与し、コレステロール値に影響を与える
- 生活習慣:
- 脂質の過剰摂取:
- 飽和脂肪酸:肉類の脂肪、乳製品、バター、ラードなど
- コレステロール:卵黄、魚卵、レバーなど
- これらの過剰摂取は、LDLコレステロールを増加させる
- 食物繊維不足:
- 野菜、果物、海藻、きのこなどに含まれる食物繊維は、コレステロールの吸収を抑える
- 運動不足:
- 運動は、善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らす働きがある
- 肥満:
- 内臓脂肪の蓄積は、悪玉コレステロールを増加させ、善玉コレステロールを減少させる
- 喫煙:
- 喫煙は、善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増加させる
- 過度な飲酒:
- アルコールの過剰摂取は、中性脂肪を増加させる
- 脂質の過剰摂取:
- 基礎疾患:
- 糖尿病:
- 高血糖状態が続くと、LDLコレステロールが酸化されやすくなり、動脈硬化を促進する
- 甲状腺機能低下症:
- 甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、コレステロールの代謝が悪くなる
- 腎臓病:
- 腎臓の機能が低下すると、コレステロールの排泄が妨げられる
- ネフローゼ症候群:
- 尿にタンパク質が大量に漏出する病気で、高コレステロール血症を合併することがある
- 糖尿病:
- 薬剤の副作用:
- 一部の薬剤(ステロイド剤、利尿薬、免疫抑制剤など)がコレステロール値を上昇させることがある
高コレステロール血症の診断:血液検査で脂質プロファイルを詳細にチェック
高コレステロール血症の診断は、血液検査で脂質プロファイルを調べることで行われます。脂質プロファイルには、以下の項目が含まれます。
- 総コレステロール (TC):血液中のすべてのコレステロールの量
- 基準値:140~219 mg/dL
- LDLコレステロール (LDL-C):動脈硬化を進めるコレステロール(悪玉コレステロール)
- 基準値:119 mg/dL以下
- 動脈硬化性疾患の既往がある場合は、70 mg/dL未満が目標
- HDLコレステロール (HDL-C):動脈硬化を防ぐコレステロール(善玉コレステロール)
- 基準値:40 mg/dL以上
- トリグリセリド (TG):エネルギー源となる脂質
- 基準値:149 mg/dL以下
- non-HDLコレステロール (non-HDL-C):総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値
- 基準値:169 mg/dL以下
- 動脈硬化性疾患の既往がある場合は、130 mg/dL未満が目標
これらの値に加えて、年齢、性別、喫煙歴、他の病気の有無などを考慮して、総合的に診断を行います。
高コレステロール血症の治療:生活習慣の改善と薬物療法の組み合わせ
高コレステロール血症の治療は、生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせて行われます。
- 生活習慣の改善:
- 食事療法:
- 飽和脂肪酸やコレステロールを多く含む食品を控えめにし、不飽和脂肪酸を多く含む食品(魚、オリーブオイル、ナッツなど)を積極的に摂取する
- 飽和脂肪酸を多く含む食品:肉類の脂肪、乳製品、バター、ラード、ココナッツオイルなど
- コレステロールを多く含む食品:卵黄、魚卵、レバー、イカ、タコなど
- 食物繊維を多く含む食品(野菜、果物、海藻、きのこ、豆類など)を積極的に摂取する
- 水溶性食物繊維:コレステロールの吸収を抑える
- 不溶性食物繊維:腸内環境を整え、コレステロールの排泄を促す
- アルコールを控えめに
- アルコールは中性脂肪を増加させる
- 飽和脂肪酸やコレステロールを多く含む食品を控えめにし、不飽和脂肪酸を多く含む食品(魚、オリーブオイル、ナッツなど)を積極的に摂取する
- 運動療法:
- 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)を1日30分以上、週に3回以上行う
- 無理のない範囲で、継続することが大切
- 禁煙:
- 喫煙は善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やすため、禁煙することが重要
- 食事療法:
- 薬物療法:
- スタチン系薬剤:
- コレステロール合成を阻害する薬
- LDLコレステロールを効果的に低下させる
- アトルバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチンなど
- エゼチミブ:
- コレステロールの吸収を抑える薬
- スタチン系薬剤:
- PCSK9阻害薬:
- LDL受容体の分解を抑制し、LDLコレステロールを低下させる新しい薬
- アリロクマブ、エボロクマブ
- その他の薬剤:
- フィブラート系薬剤:中性脂肪を低下させる薬
- ベザフィブラート、フェノフィブラートなど
- 胆汁酸吸着レジン:コレステロールの吸収を抑える薬
- コレスチラミン、コレスチミドなど
- フィブラート系薬剤:中性脂肪を低下させる薬
高コレステロール血症の予防:今からできること
高コレステロール血症は、生活習慣の改善によって予防できる可能性があります。
- バランスの取れた食事:
- 野菜、果物、魚、大豆製品などをバランスよく摂取する
- 飽和脂肪酸やコレステロールを多く含む食品を控えめに
- 飽和脂肪酸を多く含む食品:肉類の脂肪、乳製品、バター、ラード、ココナッツオイルなど
- コレステロールを多く含む食品:卵黄、魚卵、レバー、イカ、タコなど
- 不飽和脂肪酸を多く含む食品を積極的に摂取する
- オリーブオイル、ナッツ類、青魚など
- 食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取する
- 野菜、果物、海藻、きのこ、豆類など
- 適度な運動:
- ウォーキング、ジョギング、水泳など、有酸素運動を習慣的に行う
- 1日30分以上、週に3回以上を目標に
- 禁煙:
- 喫煙は善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やすため、禁煙することが重要
- 節酒:
- 過度な飲酒は避け、適量を守ること
- 男性:1日20g以下のアルコール
- 女性:1日10g以下のアルコール
- 過度な飲酒は避け、適量を守ること
- 定期的な健康診断:
- 脂質プロファイルを定期的にチェックする
- 早期発見・早期治療に繋がる
高コレステロール血症に関する参考情報
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 高コレステロール血症https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-002.html
- 日本動脈硬化学会https://www.j-athero.org/
まとめ
高コレステロール血症は、自覚症状がないまま進行し、命に関わる病気を引き起こす可能性があります。しかし、早期発見・早期治療によって、合併症を予防し、健康な生活を送ることができます。
日頃からコレステロール値を意識し、生活習慣の改善に努めましょう。そして、気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。