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イギリスのコミュニティケア:その歴史と現代社会への影響〜新救貧法から国民保健サービス創設までの流れ、グリフィス報告、コミュニティケア法などまとめ〜

イギリスのコミュニティケア:その歴史と現代社会への影響🇬🇧🏘️

イギリスのコミュニティケアは、地域社会の中で、高齢者や障害者、そして支援を必要とする人々が、住み慣れた場所で安心して暮らせるようにするための仕組みです。今回は、イギリスのコミュニティケアの歴史、現代社会への影響、そして今後の課題について、事例や年号を交えながら詳しく解説します。

1. コミュニティケアとは?🏘️🤝

コミュニティケアとは、病院や施設ではなく、地域社会の中で、必要なケアや支援を提供する考え方です。これには、医療、介護、福祉、住まいの確保など、様々なサービスが含まれます。

1.1. コミュニティケアの目的

  • 自立支援: 本人の能力を最大限に活かし、可能な限り自立した生活を送れるように支援する。例えば、家事や身の回りのことができなくなった高齢者に対して、ヘルパーを派遣したり、デイサービスを利用できるようにすることで、自宅での生活を継続できるよう支援します。
  • 社会参加促進: 地域社会とのつながりを大切にし、孤立を防ぐ。例えば、地域交流会やボランティア活動に参加する機会を提供することで、高齢者や障害者が地域社会の一員として活躍できるよう支援します。
  • 生活の質向上: 住み慣れた環境で、安心して暮らせるように支援する。例えば、自宅のバリアフリー化や、訪問看護サービスの提供などを通じて、高齢者や障害者が安心して自宅で生活できるよう支援します。
  • 医療費削減: 入院や施設入所を減らし、医療費の削減を目指す。例えば、在宅医療や訪問看護サービスを充実させることで、不要な入院を減らし、医療費の削減に貢献します。

1.2. コミュニティケアの対象者

  • 高齢者
  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者
  • 難病患者
  • 児童
  • その他、支援を必要とする人々

2. イギリスのコミュニティケアの歴史📖

2.1. 1834年:新救貧法

19世紀初頭、イギリスでは貧困層の増加が社会問題となっていました。1834年に制定された新救貧法は、貧困者を救貧院に収容し、労働させることで自立を促すことを目的としていました。しかし、救貧院での生活は過酷であり、人々の尊厳を損なうものでした。

2.2. 1948年:国民保健サービス(NHS)の創設

第二次世界大戦後、1948年に国民皆保険制度であるNHSが創設されました。これにより、すべての人が無料で医療サービスを受けられるようになり、地域での医療提供が促進されました。これは、コミュニティケアの基盤となる重要な出来事でした。

2.3. 1988年:グリフィス報告

1988年に発表されたグリフィス報告は、病院中心のケアから地域中心のケアへの転換を提唱しました。この報告書は、高齢者や障害者が病院ではなく、地域社会の中で暮らせるようにするための政策転換を促しました。

2.4. 1990年:コミュニティケア法

グリフィス報告を受けて、1990年にコミュニティケア法が制定されました。この法律は、地域における包括的なケア体制の構築を義務づけ、ケアマネジメントの導入や、サービス利用者へのニーズアセスメントの実施などを定めました。

2.5. 2014年:ケア法

2014年に制定されたケア法は、個人のニーズに応じたパーソナル・バジェット制度の導入や、介護者の権利の保障などを定めました。これにより、サービス利用者が自分のニーズに合わせてサービスを選択できるようになり、コミュニティケアの質の向上を目指しました。

3. 現代社会におけるコミュニティケアの役割と影響🌍

現代のイギリスでは、コミュニティケアは社会福祉政策の中核を担っています。地域包括ケアシステムの構築や、多様なニーズに応じたサービスの提供など、コミュニティケアは人々の生活を支える重要な役割を果たしています。

3.1. 地域包括ケアシステムの構築

地域包括ケアシステムは、医療、介護、予防、住まい、生活支援が一体的に提供される仕組みです。例えば、高齢者が自宅で安心して暮らせるよう、訪問介護や訪問看護、デイサービス、ショートステイなどを組み合わせたサービスを提供します。

3.2. 多様なニーズに応じたサービスの提供

コミュニティケアでは、個人のニーズに合わせた多様なサービスが提供されます。例えば、身体障害者には、車いすの貸与やバリアフリー住宅への改修などのサービスが提供されます。また、精神障害者には、訪問支援やグループホームなどのサービスが提供されます。

3.3. コミュニティケアの課題

  • 財政難: 高齢化の進展や医療費の高騰により、コミュニティケアの財政状況は厳しくなっています。そのため、サービスの利用料値上げや、サービスの縮小などが行われることもあります。
  • 人材不足: 介護職の人材不足は深刻な問題であり、サービスの質の低下が懸念されています。特に、経験豊富な介護職員の不足は深刻であり、質の高いケアを提供することが難しくなっています。
  • 地域格差: 地域によってサービスの質や量に差があり、格差是正が課題となっています。都市部では比較的サービスが充実していますが、地方ではサービスが不足している地域もあります。

4. まとめ

イギリスのコミュニティケアは、長い歴史の中で発展してきました。現代社会においても、人々の生活を支える重要な役割を果たしています。しかし、財政難や人材不足など、多くの課題も抱えています。今後、これらの課題を克服し、より質の高いコミュニティケアを実現していくことが求められています。

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ねぎま@ねこ好きSW

こんにちは。九州生まれ・九州育ちのねぎまです。 九州の公立学校の元教員→某施設でSWをやっています。 ここでは主に、愛猫(ロシアンブルーのnico)の成長日記・猫に関する豆知識・教職関連(教員の実態や教員採用試験対策)・社会福祉士の国試対策の情報等をまとめています。 他にも宿泊施設・グルメ・コスメのレビュー等気まぐれで。 ぜひ、のぞいていってください。

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