相談援助分野の第4回目です。
この分野は単体での出題というよりも、生活保護や高齢者、障害者、児童といった
重要な内容に付随して出題される傾向にある
と言えます。
- 社会福祉士と精神保健福祉士の意義と相談援助の概念
- 相談援助と権利擁護
- 相談援助に関わる専門職
- 専門職倫理と倫理的ジレンマ←今回ここ
- 総合的かつ包括的な援助
行ったり来たりしながら、確実に定着されてください。
専門的倫理の概念
「社会福祉の倫理」の著者であるレヴィは、倫理を
人間関係及びその交互作用に価値が提供されたもの
と規定し、人間関係における行動に直接影響を及ぼす点に特色があると述べています。
ソーシャルワーカーは個人の倫理観ではなく、専門職の倫理に則って行動することが求められます。
「全米ソーシャルワーカー協会倫理綱領」では、専門職の倫理的価値観を
- サービスの精神
- 社会正義
- 人の尊厳と価値
- 人間関係の重要性
- 誠実
- 適任性
の6つに規定しました。
ソーシャルワーカーの倫理綱領
2005年、日本でも「ソーシャルワーカー倫理綱領」が制定されました。
これは「日本ソーシャルワーカー協会」「日本社会福祉会」「日本医療社会福祉協会」「日本精神保健福祉協会」の4団体が協働して作成したものです。
社会福祉士として意識すべき「クライエントに対する倫理責任」として
- クライエントとの関係
- クライエントの利益の最優先
- 受容
- 説明責任(アカウンタビリティ)
- クライエントの自己決定の尊重
- 参加の促進
- クライエントの意思決定への対応
- プライバシーの尊重と秘密の保持
- 記録の開示
- 差別や虐待の禁止
- 権利擁護
- 情報処理技術の適切な使用
が挙げられています。
そのほかの倫理綱領
日本社会福祉会の「日本社会福祉会の倫理綱領」は、ソーシャルワーカー倫理綱領を社会福祉士に置き換えたもので、2020年に改訂されて「原理」「倫理基準」が示されました。
他にも「日本精神保健福祉士協会倫理綱領」「医療ソーシャルワーカー倫理綱領」などがあります。
倫理的ジレンマ
ジレンマと倫理綱領
上記のように、さまざまな専門職において倫理綱領が規定されています。
倫理綱領は援助(支援)を行う際の判断基準となるものですが、現場においては倫理上の判断が難しいケースも多数起こり得ます。
この状況を「倫理的ジレンマ」と言います。
「倫理的ジレンマ」を避けるために考えられたのがウェルビーイングです。
ウェルビーイングとは
クライエントの自己決定が本人の生命や健康を大きく損ねる場合や、他社の権利を脅かす場合は、人と環境の相互作用の視点から調和を図る
という考えです。
ジレンマと解決法
ビューチャンプとチャイルドレスは守秘義務違反が正当化される場合を以下のように示しました。
- 第三者に重大な危害が及ぶと予測される
- 危険や危害が起こる可能性が高い
- リスクのある人への警告や保護以外に選択肢がない
- 危害を予防するためには守秘義務を破るしかない
- クライエントへの危害が最小限で許容範囲内である
ドルゴフは「ジレンマが生じた時、援助者は自分の価値体系ではなく、倫理綱領を優先することが前提」としながらも、ジレンマが解決できない場合は優先順位に基づいて行動することを提示しました。
その優先順位とは
- 生命の保護の原則
- 平等と不平等の原則
- 自己決定と自由の原則
- 最小限危害の原則
- 生活の質の原則
- 個人情報(プライバシー)と守秘義務の原則
- 誠実さと開示の原則
で表され、倫理原則選別リスト(EPS)と言われます。
倫理綱領があることによって「個人の価値体系に依らない判断基準ができた」というメリットができました。
一方で、解決できない場合は周りとの調和を図りながらも、生命や平等・不平等、自由といったクライエントの人間性を守るべく判断する必要があります。
終わり
今回はここまでです。
ソーシャルワーカーの倫理綱領と倫理的ジレンマは、制度(考え)の基本を覚えてしまえば難しくはありません。
しっかり整理して、出題されたときは
「ごっつぁんです!」
とありがたく得点させていただきましょう!
次回は相談援助分野最後の領域である「総合的かつ包括的な援助」についてまとめる予定です。