前回までに「相談援助」分野の概要をまとめてきました。
大枠を捉えることができたところで、今回からは具体的な相談援助のスキルを覚えていきましょう。
- システム思考とシステム理論←今回ココ!
- 相談援助のモデルと具体的なアプローチ(A)
- 相談援助の過程
- 相談援助の技術(A)
中でも「相談援助の技術」は種類が多く、頻出領域となっています。
システム思考
ソーシャルワークが発展してきた流れとしては
- 基礎確立期(〜1920年代)
- 発展期(1930〜1950年代)
- 批判・統合期(1960〜1970年代)
- 再編・発展期(1980年代〜)
と大まかに類別することができます。
それぞれを代表する著名人と確立した理論を整理していきましょう。
基礎確立期(〜1920年代)
リッチモンドがケースワークを体系化し、フロイトが提唱した精神分析理論をケースワークに導入したハミルトンらによってソーシャルワークの基礎が確立されます。
この時代は
クライエントの問題は病理状態である
と捉える治療モデルが一般的でした。
援助者は「診断」を行い、「治療」すると考える診断派(診断主義アプローチ)が主流でした。
発展期(1930〜1950年代)
精神分析学・心理学の発展に伴い、
ソーシャルワークの目的はパーソナリティの発達である
とみなされるようになりました。
この頃から「治療」から「援助」へと機能派(機能主義アプローチ)が台頭し始めます。
フロイトの精神分析学から離れ、
クライエントの主体性や意思を尊重した
心理臨床家のランクの考えが主流となっていきました。
診断派と機能派は当初激しく対立していましたが、1950年代になると統合が進みます。
機能派ではアプテカー、診断派ではパールマンが中心となりました。
批判・統合期(1960〜1970年代)
パールマンは問題解決アプローチを提唱し、ケースワークを問題解決の過程として見るようになりました。
1967年、パールマンはベトナム戦争期のアメリカでケースワークの効果が低いことを憂い
「ケースワークは死んだ」
と自己批判を行います。
この現実を踏まえて、1970年代〜「人と環境の相互作用」という新しい視点として
- 生態学理論
- システム理論
が導入され始めました。
生態学とは
生物と環境が相互に与える影響を研究対象とする学問
であり、システム理論とは
あるシステムを成り立たせている要素と要素の関係を解き明かそうとする
ことです。
この生態学理論とシステム理論の両方を取り入れて「生活モデル(ライフモデル)」という考えが出来ました。
生活モデルはジャーメインとギッターマンで著され、コンピテンス(力量・能力)という概念に注目しました。
同時にゴールドシュタインらによってケースワークやグループワーク、コミュニティ・オーガニゼーションといったソーシャルワークの共通基盤の統合化が進むことになりました。
再編・発展期(1980年代〜)
生活モデルを基にして、メイヤーやジョンソンらによるエコシステム理論によるジェネラリスト・ソーシャルワークが重視されるようになりました。
このシステム理論からケースマネジメントへと発展し、1990年代になると
- ストレングスモデル
- エンパワメントアプローチ
- ナラティブアプローチ
- サイバネティックス
- 自己組織性
も注目を集めるようになりました。
システム理論
一般システム理論
システム理論とは、生物学者のベルタランフィによって提唱され
- 一つのシステムの中には複数のサブシステム(下位システム)があり、互いに作用しながらまとまっている
- システムは閉じたものではなく開放的なものである
という考えを示しました。
そして、ピンカスとミナハンによってソーシャルワークの4つの基本システムが提唱されました。
クライエント・システム | クライエント、家族、友人など身近な人を指す。 |
チェンジ・エージェント・システム | 援助者と援助者の属する施設や機関などを指す。 |
ターゲット・システム | 問題解決のためのターゲットとなる人物や機関などを指す。 |
アクション・システム | クライエント本人を含め、ターゲット・システムに用いられる人々や資源全体を指す。 |
サイバネティックス
サイバネティックスとは、数学者ウィナーによって提唱されたシステム制御理論です。
システムは
- 環境から入ってくるインプット
- インプットされた情報を環境に流出させるアウトプット
- アウトプットされたものを受けて環境から新しく入ってくるフィードバック
が基本となります。
またシステム自体に
インプットされたものを取り入れながら安定した状態を保とうとする恒常性(ホメオスタシス)
があり、過剰な逸脱が起きた場合に
- ネガティブ・フィードバック(逸脱を消去しようとする動き)
- ポジティブ・フィードバック(新たなシステム状態に向かう動き)
を起こそうとします。
自己組織性
自己組織性とは
生物が自律的に新しい秩序を作る性質
のことです。
化学者プリゴジンは
自然界では不安定な状態が発生すると、その「ゆらぎ」を通じて自己組織化が起きること
に着目しました。
終わり
今回はここまでです。
人名がたくさん出てくる上に、どの理論を提唱したか覚えにくいところですが、頑張ってインプットしていきましょう!
次回は「相談援助のモデルと具体的なアプローチ」についてまとめる予定です。