前回から社会調査分野の量的調査についてまとめました。
今回は質的調査について整理していきます。
具体的には
- 質的調査とは(概要)
- 種類
- 過程
- 記録方法と留意点
- データ整理と分析
- 実践
この6項目です。
質的調査とは(概要)
質的調査とは、数値化が困難な言語記述データの分析のことで
母集団が特定しにくい場合や量的に分析しにくい場合
に用いられます。
この特徴から事例調査とも呼ばれます。
1990年代以降オーラル・ストーリー(口述史)が常用しされ、ライフ・ストーリー調査やナラティブ分析が取り入れられるようになりました。
質的調査は言語媒体を扱うため、メモや手紙家計簿など私的文書も質的データとして活用します。
種類
大別すると観察法と面接法の2種類です。
質的調査では調査者自身がデータを集める方法が中心となります。
観察法
統制的観察法⇄非統制的観察法
予め決めておいた観察方法や調査内容に沿って行います。
参与観察法
調査者が対象者の集団に入り込んで内部から観察します。
オーバーラポール(過度な信頼関係)を避ける必要があります。
アクション・リサーチという対象者と共同しながら調査する場合もあります。
非参与観察法
調査者が対象者の集団の外部から観察します。
面接法
構造化面接法
予め用意した質問事項に厳密に沿っています。
半構造化面接法
予め質問事項は用意しておくが、会話の中で柔軟に変更しながら行います。
非構造化面接法(自由面接法)
事前用意をせず、会話の中で自由に質問しながら行います。
過程
種類が決定すると目的に沿ったフィールドを選定します。
フィールドが決定したのち、調査協力を依頼していきます。
記録方法と留意点
原則、対象者の答えは即記録することが望ましいですが、調査終了後に記録することもあります。
この記録媒体をフィールドノートと呼び、出来事や発言以外にも雰囲気や言葉遣いなど細かく記入します。
記録が積み重なっていったものをエスノグラフィーと言います。
データ整理と分析
収集したデータの整理においては、ファイリグ、コーディング、マッピングの3つの方法があります。
ファイリグ
必要なデータをすぐに取り出せるために「どこにあるのか」把握しておく必要があります。
また得られたデータをカード化して、文脈から切り離すことも有効とされています。
コーディング
分析のために小見出しや小タイトルをつけることをコーディングと言います。
作業の中でデータを縮約・圧縮させていくこともあります。
逆に対象者の言葉をそのまま用いることをインボビ・コーディングと言います。
マッピング
調査結果を図表にして視覚化する方法。
質的調査の科学性を維持する中で重要です。
実践
グラウンデッド・セオリー・アプローチ
グレイザーとストラウスが提唱した理論で、データ対話型理論とも呼ばれます。
データに根ざした分析を積み重ねて理論を創出する
ことを目標としています。
具体的には以下の3つの段階があります。
- オープン・コーディング
- 軸足コーディング
- 選択的コーディング
それぞれどのような役割があるかというと
データの切片⇄コーディング⇄カテゴリー化⇄体系化⇄理論の創出
オープン・コーディング
コーディングからカテゴリー化する段階のこと
データに見出しを付ける、という意味。
軸足コーディング
カテゴリー化したものを体系化する段階のこと。
この時コーディング・パラダイムが用いられます。
選択的コーディング
体系化したものを理論化する段階のこと。
グラウンデッド・セオリー・アプローチの最大の特徴は、各段階を一方通行にするのではなく、行ったり来たりしながら、最終的に理論の創出に向かうことにあります。
「もうこれ以上理論が発展できない」
状態に達したことを理論的飽和といい、創出完了となります。
KJ法
川喜田二郎が考案した仮説を立てたり発想を得たりするための手法。
自分の考えをカードに書き、グループで出し合って図表化し、結論を導く。
終わり
今回はここまでです。
社会調査は独立性のある分野なため、覚えておけば点数が取れます!
ねぎま的には、
くらいで良いのでは、と
次回は、「心理学と心理療法」についてまとめていく予定です。