社会福祉士国家試験対策:イギリスの社会保障制度の歴史
1. エリザベス救貧法(1601年)【学習のポイント】
- 内容:
- 救済の対象を貧困者に限定
- 救済の方法を「院外救済」(健常な貧困者への労働の強制)と「院内救済」(老齢者、病人、児童などへの施設収容)に分類
- 救貧税を財源とし、教区を救貧行政の単位とした
- 意義:
- 近代的な救貧法の基礎を確立
- 公的責任による救貧制度の始まり
- 問題点:
- 貧困者を stigmatize(烙印を押す)する側面
- 抑圧的な救済方法
2. 新救貧法(1834年)【学習のポイント】
- 内容:
- 救済の原則を「劣等処遇の原則」(救済は最低限の生活水準にとどめ、労働意欲を減退させない)とした
- 救貧院への収容を原則とし、院外救済を制限
- 救貧行政の単位を教区連合とした
- 背景:
- 産業革命による貧困問題の深刻化
- 救貧費の増大
- 問題点:
- 貧困者への過酷な処遇
- 家族の分離
3. ベヴァリッジ報告書(1942年)【学習のポイント】
- 内容:
- 「ゆりかごから墓場まで」の包括的な社会保障制度を提唱
- 5つの悪(貧困、疾病、無知、不潔、怠惰)の克服を目標とした
- 国民皆保険制度、国民皆年金制度、家族手当制度、失業保険制度などを提案
- 背景:
- 第二次世界大戦中の社会不安
- 社会再建への機運の高まり
- 意義:
- 福祉国家建設の理念を提示
- その後の社会保障制度改革に大きな影響を与えた
4. 国民保健サービス(NHS)創設(1948年)【学習のポイント】
- 内容:
- すべての国民に医療サービスを無料で提供する制度
- ベヴァリッジ報告書に基づき創設
- 意義:
- 福祉国家の象徴的な制度
- 医療へのアクセスを平等に保障
5. サッチャー政権下の改革(1979年~1990年)【学習のポイント】
- 内容:
- 社会保障支出の削減
- 市場原理の導入
- 民営化の推進
- 背景:
- 経済の停滞
- 財政赤字の拡大
- 問題点:
- 格差の拡大
- サービスの質の低下
6. ブレア政権下の改革(1997年~2007年)【学習のポイント】
- 内容:
- 「第三の道」と呼ばれる中道左派路線を推進
- 社会保障支出の抑制と効率化
- 就労支援の強化
- 背景:
- グローバリゼーションの進展
- 新自由主義の影響
- 問題点:
- 貧困問題の解決には至らず
7. キャメロン政権下の改革(2010年~2016年)【学習のポイント】
- 内容:
- 財政緊縮政策
- 社会保障給付の削減
- 福祉の条件付き化
- 背景:
- 世界金融危機の影響
- 財政赤字の深刻化
- 問題点:
- 貧困層への打撃
- 社会的不平等を助長
8. 学習のポイントまとめ
- イギリスの社会保障制度の歴史は、救貧法から福祉国家、そして新自由主義的な改革へと変遷してきた。
- 各時代の社会背景、政策内容、問題点を理解することが重要。
- ベヴァリッジ報告書は、福祉国家建設の理念を提示した重要な文書である。
- イギリスの社会保障制度は、日本を含む世界の社会保障制度に大きな影響を与えている。
9. 国家試験対策のポイント
- 過去問を繰り返し解き、出題傾向を把握する。
- 重要用語の意味・役割を理解する。
- 各時代の社会保障政策を比較・検討する。
- イギリスの社会保障制度と日本の社会保障制度の共通点・相違点を考える。
- 最新の動向にも注意を払う。