今回から「相談援助」分野をまとめていきます。
相談援助分野は心理学分野や社会保障分野とも関連が深く、広い範囲をカバーできます。
その分覚えることも多いですが、確実にインプットしていきましょう。
- 社会福祉士と精神保健福祉士の意義と、相談援助の概念←今回ここ
- 相談援助と権利擁護
- 相談援助に関わる専門職
- 専門職倫理と倫理的ジレンマ
- 総合的かつ包括的な援助
この分野もなかなかの広範囲かつ重要なところです。
社会福祉士と介護福祉法
定義
そもそも社会福祉士とは社会福祉士法及び介護福祉士法によると
- 登録を受け、社会福祉士の名称を用いて日常生活を営むのに障害がある者の
- 福祉に関する相談に応じ、
- 助言・指導、福祉サービスを提供する者または医師その他関係者との連絡及び調整
その他の援助を行う者、と定義されます。
介護福祉士とは
- 登録を受け、介護福祉士の名称を用いて日常生活を営むのに障害がある者の
- 心身の状況に応じた介護を行い、
- 介護者に対して介護に関する指導を行う
とされています。
義務
社会福祉士及び介護福祉士には4つの義務があります。
- 誠実義務
- 秘密保持義務
- 連携
- 資質向上の義務
です。
具体的に見ていくと
誠実義務
個人の尊厳を保持し、常にその者の立場に立って、誠実に業務を行う義務があります。
秘密保持義務
正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らしてはならず、退職した後も同様です。
連携
社会福祉士は、福祉サービス及び保健医療サービスが適切に提供されるよう、地域に即した創意工夫、関係者との連携を行う義務があります。
介護福祉士は、認知症であること等の心身の状況に応じて、福祉サービス関係者と連携を行う義務があります。
資質向上の義務
相談援助または介護等に関する知識及び技能の向上に努める義務があります。
精神保健福祉士
ちなみに、精神保健福祉士は精神保健福祉士法に基づき上記と同様の義務が規定されています。
資格の豆知識
国家資格には「名称独占」の資格と「業務独占」の資格があります。
名称独占とは、
無資格の人も業務を行うことは可能だが、その名称を名乗ることはできない
資格で、社会福祉士や介護福祉士、精神保健福祉士が該当します。
一方、業務独占とは
無資格者はその業務を行うことができない
資格で、医師などが該当します。
ソーシャルワークに関わる定義
ソーシャルワークに関わる団体として
- 国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)
- 国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)
があります。
2004年、共同で「ソーシャルワークにおける倫理ー原理に関する声明」を採択しました。
ここで
- 人権と人間の尊厳
- 社会主義
を原理として掲げました。
2007年、「ソーシャルワークのグローバル定義」を採択しました。
ここでソーシャルワークとは
- 社会変革と社会開発、社会的結束及び人々のエンパワメントと解放を促進する
- 社会正義、人権、集団的責任及び多様性尊重の諸原理はソーシャルワークの中核をなす
- ソーシャルワークは生活課題に取り組みウェルビーイングを高める
と定義されました。
ソーシャルワークの起源
ソーシャルワークの起源は、
1601年イギリスで制定された「エリザベス救貧法」に始まります。
1834年に新救貧法が制定され、1869年「慈善組織協会(COS)」が誕生しました。
COSの指導者C.ロックは自助努力の有無を基準として
- 救済に値する貧民
- 救済に値しない貧民
とに大別しました。
デニスンが創始したセツルメント運動は学生や知識人がスラム街に住み込み、教育活動を展開することです。
デニスンは
貧困の真の解決は施しを与えるのではなく、自立した生活への意欲を取り戻させる
と考え始めました。
1884年にはバーネットがトインビー・ホールをロンドンに設立しました。
このセツルメント運動はアメリカにも影響を与えました。
1886年、コイトがネイバーフッド・ギルドを設立しました。
1889年、アダムスによってハル・ハウスが設立されました。
これらのセツルメント活動によって
- グループワーク(集団援助技術)が進展するとともに、
- コミュニティワーク(地域援助技術)が体系化されました。
ソーシャルの形成過程
上記でソーシャルワークの起源をまとめました。
ここでは年代を追いながらソーシャルワークが形作られていったかをまとめます。
1920年代まで
イギリスのCOSでケースワークの基盤が確立されました。
20世紀初め、アメリカのリッチモンドによって体系化されていきます。
全米慈善矯正会議において、リッチモンドが応用博愛学校の必要性を提唱し、
人と社会環境との間を個別に意識的に調整することを通して、パーソナリティの発達を図る諸過程
とケースワークを定義しました。
1923年〜ケースワーク分野の代表者によるミルフォード会議が開催されました。
1929年、報告書である「ソーシャル・ケースワーク:ジェネリックとスペシフィック」がまとめられ、
ソーシャルワークの専門職化
が進むことになりました。
1930〜1950年代
1930年代から
- フロイトの精神分析学の流れを汲む診断派
- ランクの意志心理学に基づく機能は(パーソナリティ論)
両者の間で激しい論争が展開されました。
そんな中マイルズは「リッチモンドに帰れ」と原点回帰を呼びかけました。
1957年、グリーンウッドは「専門性の属性」で「ソーシャルワーカーは既に専門職である」と結論づけました。
1960〜1970年代
1960年代に入ると、「貧困や人種問題にソーシャルワークが効果的な対応とならなかった」と批判が生まれます。
パールマンは「ケースワークは死んだ」と論じ「問題解決アプローチ」を提唱し
個別援助技術は個人が社会に機能する際に出会う問題を、より効果的に処理できるよう人間福祉機関によって用いられる過程である
と定義しました。
ホリスは「心理社会的アプローチ」を提唱し
- 個別援助技術の構成要素は、個人・環境・その両者の相互関係と捉え、
- 状況の中にある人間
をケースワークの中心概念として位置付けました。
1970年、バートレットは
- 「価値」「知識」「介入方法」がソーシャルワークに不可欠な要素であり、
- 三者の均衡が重要である
としました。
1980年代以降
1980年代以降になると、生活モデルをもとに多様な技術を統合する援助方法が用いられるようになります。
1990年代以降は包括的な視点を維持しつつ、ジェネラリスト・ソーシャルワーク理論が主流となりました。
ジェネラリスト・ソーシャルワークとは、
現代社会における多様化・複雑化した福祉ニーズにアプローチする
という意味です。
終わり
今回はここまでです。
次回は「相談援助と権利擁護」についてまとめる予定です。