前回から「相談援助」分野のまとめを行なっています。
今回は日本における相談援助の概要や権利擁護について整理していきます。
- 社会福祉士と精神保健福祉士の意義と相談援助の概念
- 相談援助と権利擁護←今回ここ
- 相談援助に関わる専門職
- 専門職倫理と倫理的ジレンマ
- 総合的かつ包括的な援助
覚えておいて損がない分野ですから、諦めずに取り組んでください。
日本におけるソーシャルワーク
2005年、日本ソーシャルワーカー協会がソーシャルワーカーの倫理綱領を示しました。
2020年の改正でソーシャルワーカーは
全ての人々を、出自、人種、民族、国籍・・・違いに関わらず、かけがえのない存在として尊重する
と規定されました。
また社会福祉士はクライエントとその家族、集団、地域の抱えるニーズに対し、
- 相談援助や社会資源の活用、ソーシャルアクションを行い
- 自由・平等・共生に基づく社会正義の実現に取り組む
ことが求められていると規定されました。
クライエント本位
倫理綱領によってクライエント本位とは
- クライエントの利益の最優先
- 受容
- 説明責任
- クライエントの自己決定の尊重
の4つが示されています。
クライエントの利益の最優先
ソーシャルワーカーは、業務の遂行に際してクライエントの利益を最優先に考えなければならない。
受容
ソーシャルワーカーは、自らの先入観や偏見を排し、クライエントをあるがままを受容しなければならない。
説明責任
ソーシャルワーカーは、クライエントに必要な情報を適切な方法、わかりやすい表現を用いて提供しなければならない。
クライエントの自己決定の尊重
ソーシャルワーカーは、クライエントの自己決定を尊重し、その権利を十分に理解・活用できるようにしなければならない。
なおクライエントの自己決定が本人の生命や健康を大きく損ねる場合や、他者の権利を脅かす場合は、
人と環境の相互作用の視点からウェルビーイングの調和を図ることに努めなければならない
とされています。
権利擁護
権利擁護とは
意思を十分に表明できないなどの理由から、利益や権利が侵害されないようにする
ことを言います。
ソーシャルワーカーは、意思決定能力の不十分なクライエントに対して
常に最善の方法を用いて利益と権利を擁護し、あらゆる権利侵害の発生を防止すること
が求められています。
自立支援
自立支援とはADL(日常生活動作)の向上を目指すだけでなく、
- クライエントのQOL(生活の質)の向上を目標とし
- 自分の生き方を自分の意思に基づき、
- 自らが選択・決定していく環境を整備しサポートする
ことを指します。
社会的包摂
ソーシャル・インクルージョンとも言います。
全ての人々を孤立や孤独、排除、摩擦から援助し、社会の一員として包み支え合うこと
を指す理念です。
対義語は社会的排除(ソーシャル・エクスルージョン)と言い、
社会的な参加の機会喪失や法制度の網の目からすり抜けてしまい、次第に社会から排除され孤立していくこと
を意味します。
社会福祉法第4条においても
「地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者〜〜は、相互に協力し、あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるように地域福祉の推進に努める義務がある」
とされており、社会からの孤立を防止する目的があります。
ノーマライゼーション
ノーマライゼーションとは
何らかの障害があってもノーマルな生活が維持できるように環境を整備する
という考え方のことです。
デンマークの行政官バンク・ミケルセンにより提唱されました。
その後スウェーデンのニィリエが
知的障害者の生活様式を平常化させるための8つの原理
を提唱し、ミケルセンの理論をより具体化させました。
8つの原理とは
- ノーマルなリズムによる1日の生活
- ノーマルなリズムによる1週間の生活
- ノーマルなリズムによる1年間の生活
- ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験
- 自己決定に対するノーマルな理解と尊重
- ノーマルな異性との生活
- ノーマルな経済水準による生活
- ノーマルな住環境による生活
を指します。
相談援助における権利擁護の意義
相談援助における権利擁護とは
あらゆる権利侵害、またはその可能性のあるクライエントの権利が、保障され行使できるようにする
ことを指します。
この権利擁護に関する課題を解決していくことをアドボカシーと言います。
アドボカシーには
- ケースアドボカシー
- クラスアドボカシー
- セルフアドボカシー
といった種類があります。
アドボカシーの種類 | |
ケースアドボカシー | クライエント個人や家族を対象とする課題解決 |
クラスアドボカシー | 同じニーズを抱える福祉サービス利用者集団や地域を対象とする課題解決 |
セルフアドボカシー | 当事者自身やグループが抱える課題に対し、自ら行動を起こし権利を主張すること |
終わり
今回はここまでです。
相談援助分野は、社会福祉士として現場に出るようになった時から必要となる実践的知識・スキルばかりです。
試験合格を目標とするのはもちろん、合格した後の自分の姿をイメージしながら覚えることで、よりスムーズな社会福祉士としての一歩を踏み出せます。
相談援助分野は先が長いですが、頑張って覚えましょう!
次回は「相談援助に関わる専門職」についてまとめる予定です。