さて今回は扱うテーマは「社会保障」
もともと海外発祥の制度で、のちに日本にも伝わりました。
まずは社会保障発祥の地・イギリスから世界に広がっていった社会保障の現状を整理しましょう。
ここでは
- イギリス
- アメリカ
- ドイツ
- その他
の4つに分けてまとめていきます。
イギリスの社会保障
歴史
社会保障の歴史の始まりとも言える法律が誕生したのはイギリス。
1601年エリザベス救貧法(旧救貧法)の制定によります。
1834年新救貧法(改正救貧法)は均一処遇という救済水準を全国一律にしました。
新救貧法の重要概念は
劣等処遇の原則と院外救済の禁止
です。
背景
20世紀初頭、ブースやラウントリーが貧困調査を行いました。
ブースはロンドン市民の約30%が貧困線以下と発表しました。
ラウントリーはヨーク市民の約28%が貧困状態であり、中でも子の養育期と高齢期が顕著であると捉えました。
1911年 ドイツの社会保険制度を基に「国民保健法」を制定し、世界初の失業・疾病保険制度を作りました。
ナショナル・ミニマム
著書「産業民主制論」でウェップ夫妻が提唱しました。
これは
国家が国民に対して最低限度の生活を保障する
というものです。
具体的には
- 雇用
- 余暇
- 健康
- 教育
という4分野を包括し、年金制度による貧困予防を提唱しました。
べヴァリッジ報告
第二次世界大戦中〜戦後にかけて、現在の骨子が固まり始めます。
とりわけ
1942年イギリスのべヴァリッジが「社会保険及び関連サービス」という報告書を公表しました。
概要
この報告書の中で、イギリスが克服すべき問題を
- 窮乏
- 疾病
- 無知
- 不潔
- 怠惰
という5巨人悪とし、中でも窮乏の克服が第一と提唱します。
社会保障制度について
- 児童手当
- 包括的な国民保険医療制度
- 雇用の維持
この3つが社会保障において必要不可欠とする。
方法
- 社会保険
- 国家扶助
- 任意保険
この3つの方法で社会保障を実現するとする。
財源
均一額の保険料拠出による最低生活費給付を行うとする。
これによって戦後のイギリスでは
1945年 家族手当法
1946年 国民保険法
1946年 国民保健サービス法
1948年 国民扶助法
と一連の法律が制定され「揺り籠から墓場まで」となっていきました。
現状
税方式の国民保健サービス(NHS)が全国民に提供されています。
原則、医療費は無料、薬剤費・歯科診療費は一部有料となっています。
アメリカの社会保障
アメリカで社会保障に関する法律ができたのは、イギリスに比べるとずっと後です。
1935年社会保障法の制定←社会保障という言葉の世界初出
背景には、1930年代の世界恐慌がありました。
ルーズベルト大統領が「ニューディール政策」の一環として制定され
- 社会保障(老齢年金と失業保険)
- 公的扶助
- 社会福祉サービス
3つの要素を含んだいました。
そもそも直近までアメリカには
メディケア | 老齢・障害年金受給者、慢性腎臓病疾患を対象 |
メディケイド | 低所得者を対象 |
という2つの公的医療保障しかありませんでした。
それが2010年オバマ大統領により医療保険制度の改革が行われました。
同年に医療保険改革法が成立し、
全国民に補償加入を義務付けました
ドイツの社会保障
19世紀末「鉄血宰相」と呼ばれたビスマルクのもと、「飴と鞭」政策が行われました。
1883年 疫病保険法←世界初の社会保険制度
1884年 労働者災害保険法
1889年 廃疾・老齢保険法
またドイツの年金制度は、一定以上の所得のある被用者は強制加入です。
しかし一定範囲の自営業者や無業者(学生・主婦等)は任意加入です。
また保険給付として介護手当があります。
その他の国の社会保障
スウェーデン
医療保障ではランスティング(日本における県)の税収で賄われています。
フランス
医療保障において「社会保険方式」で行われ、原則償還方式です。
これは窓口で全額を支払い、後に自己負担分を除いて被保険者に払い戻しされる方式のことです。
ちなみに医療保障は税方式と社会保険方式に大別されます。
- 税方式は全国民を対象に税を主たる財源とする
- 社会保険方式は被保険者の保険料で賄い、保険適用範囲を予め定める
終わり
今回は社会保障の始まりをまとめました。
海外の歩みをもとに、日本の社会保障制度が整ってきます。
こちらについては次回まとめます!