ねこ日和

FIPと診断された愛猫「ナナ」の生涯329日間

診断書

2023年6月4日(日)20:25、ロシアンブルーの愛猫「ナナ」が空の上に旅立ちました。

生まれてから329日目の早すぎる急逝・・・FIP猫伝染性腹膜炎)による最期でした。

私のTwitterでは、オスのロシアンブルーの動画、画像しかアップしておらず、ナナの動画や画像は全くアップしていません。

それはFIPと言う病気が現代の獣医学をもってしても致死率100%であり、そう遠くない未来に空の上に旅立つことが分かっていたからです。

同じように愛猫がFIPとなって懸命に闘病している飼い主(愛猫)や、これから子猫を迎えようとされている飼い主にFIPのことを知ってもらいたいと考え、今回記事に残すことにしました。

猫好きな方への一助となれば幸いです。

 

ナナをお迎えするまで

ナナの紹介

猫種:ロシアンブルー

性別:メス

生年月日:2022年7月10日

お迎え日:2022年10月18日(契約日は10月17日)

引き渡し時の体重:1.05キロ

ナナと言う名前は、この子が7月生まれなのと契約日が7のつく日だったこと、幸運に恵まれてほしいと願いを込めて付けました。

 

夫婦ともに猫をお迎えするのは初めてでした。

ただ、初めての猫はロシアンブルーにしたいと二人でずっと話していました。

と言うのも、ロシアンブルーは

  • 忠誠心が強く、飼い主を独占したがる
  • ボイスレスキャットと言われるくらい無駄な鳴きをしない
  • ロシアンスマイルと呼ばれる笑顔が素敵

こんな特徴があり、すごく惹かれていたからです。

 

2022年の夏頃からショップでロシアンブルーを探し始めました。

けれど、アメリカンショートヘアーやノルウェージャンフォレストキャットはよく見かけても、ロシブルちゃんにはなかなか出会えないことに気づきました。

隣の県まで車でロシブル探しに出かけたこともありました。

「今はタイミングが悪いのかなぁ・・・」

夫婦でそんなことを考え始めていた秋口、運命の出会いが訪れました。

 

10月17日の夕方

自宅近くのショッピングモールに併設されているペットショップを覗いてみたところ・・・ロシブルちゃんがいました!!!

そのショッピングモール自体は、日々の買い物で週2回ほど立ち寄っていました。

ですので、2〜3日前に覗いた時はいなかった子でした。

「ねえねえ!ロシブルちゃんがいるよ!!」

妻がショーウィンドウに貼られたポップを見て興奮しながら私を呼びました。

「ホントだ!こないだ見た時はいなかったのに!!」

私も興奮してショーウィンドウを覗き込みます・・・が、肝心のロシブルちゃんの姿がありません。

「休憩中なのかな・・・店員さんに聞いてみようよ」

時刻も遅かったため少しだけ躊躇いはありましたが、やっと見つけたロシブルちゃんを一目見てみたくて店員さんに声をかけました。

 

正直なところ、ポップに映っていた写真の顔はあまり可愛くありませんでしたw

目が下がっていて、なんとなく「愛らしさ」に欠けている感じがしたのです。

でも店員さんが実物を連れてきてくれて時、それらは180度変わりました!

 

「「可愛い〜〜〜!!!」」

 

夫婦そろってなでなで抱っこ✖️2

写真よりも目が大きくて、クリクリしていました。

「やっぱり写真と実物は全然違うね」

レストランの食品サンプルと実物の違いとは比べ物にならないくらい、衝撃を受けた瞬間でした。

 

店員さんから、

「この子は、今日がデビューなんですよ」

と言われました。

数日前に姿が見えなかったのもこれで納得です。

 

二人してロシブルちゃんを抱っこしながらどうしようか話しました。

けれど、これだけ探してなかなか見つからなかったロシブルちゃんです。

自ずと答えは出ていました。

 

とはいえこの時点で19時を回っており、今から契約を最後まで結ぶのは時間的に無理があるのは分かっていました。

そこで店員さんと相談した結果、

  • 仮契約として生体代金の一部を支払い、本日以降店頭に出さない
  • ケージやトイレといった設備物だけ購入手続きを済ませ、自宅でお迎えの場作りを行う
  • 翌日再度来店し、重要事項の説明やペット保険の加入説明を受けて本契約を行う

ことにしました。

 

翌日、夫婦それぞれ仕事を終えて夕方に合流、ワクワクしながらショップへ向かいました。

昨日対応してくれた店員さんが、引き続き案内をしてくださいました。

私たちとしては元気なのかどうかが一番心配でしたので、

「食欲はどうですか?」

「うんちはコロコロですか?」

「今までに病気はないですか?」

など、健康面について基本的なことをお尋ねしました。

 

店員さんは元動物病院で看護師をしていたらしく

「ご飯は規定量を問題なく食べていますよ」

「うんちも問題ありません」

「ただお迎えと言う大きな環境の変化で、一時的に体調を崩すことはあるかもしれません」

と説明してくださいました。

 

中でも

「この子は最初フーフーシャーシャー威嚇する子でしたが、しっかりお世話をして今はこんなに人慣れできました」

と言われたのをよく覚えています。

 

この時点では疑問を持ちませんでしたが、後になって「あれ?」と感じることがありました。

それは、

  • ご飯はカリカリ(総合栄養食)とウェットフードのミックスに粉ミルクをかけ、50度ほどのぬるま湯でふやかす
  • ペット保険の加入を「これでもか!」と言わんばかりに勧められる
  • ロシブルちゃんの名前を聞かれ、「ナナにしようと思って・・・」と言いかけたら、「ここ(契約書)に書くんで」と言いながら会話を遮って記入される

 

特にペット保険の加入に関しては、

  • 子猫は環境の変化やストレスで病気になりやすい
  • 小さいうちは誤飲や誤食の可能性が高く、お守りとしてみんな加入している
  • 動物病院の看護師をしていた頃、よく子猫が運ばれてくることを知っている

と声高に言われました。

元々ペット保険には加入するつもりではいましたが、ここまで強く勧められるとは思っていませんでした。

 

ちなみに私の実家は15歳になるミニチュアダックスがいて、2歳を超えるあたりまでは病気やケガで病院に行くことが何度もありました。

その時の経験から子猫(子犬)の時のペット保険の重要性は十分経験済みだったからです。

保険の契約説明では、特に子猫の時になりやすい病気や事故のことを詳しく聞きました。

店員さんからは

  • 子猫は好奇心旺盛で何にでも口にしたがるため、誤飲誤食が多いこと
  • 寄生虫の駆虫薬は飲ませているが、駆虫されきっていない場合もあること
  • 猫の10%程度が「FIP(猫伝染性腹膜炎)」と言う極めて致死率の高い病気になること

などを説明してもらいました。

 

何はともあれ、本契約とペット保険の加入手続きを済ませました。

ロシブルちゃんこと「ナナ」を抱っこして、お迎え決定の写真を撮りました。

店員さんはナナに

「家族が決まってよかったね」

と声をかけ、ナナも店員さんの顔を見上げて

「にゃっ」

と短く声を上げました。

お店の入り口まで見送っていただき、ナナとの新しい生活を夫婦で話しながら家路につきました。

 

帰宅した時刻はすでに8時を回っていました。

子猫にとって引っ越しは大きなストレスです。

店員さんからも

「お迎えして2週間ほどは、ケージの中で様子を見て環境に慣れさせてください」

と言われていました。

話しかけたり抱っこしたりしたい気持ちをグッと我慢して、ケージに入れてからは部屋を暗くしました。

「「おやすみなさい、ナナ」」

暖かな気持ちに包まれがら、少し後ろ髪を引かれながら、初日の夜は静かに休ませることにしました。

この時までは、心穏やかな毎日が続くと夫婦ともども全く疑いませんでした・・・

 

食欲不振・・・軟便・・・下痢との戦い

お迎えした翌日

困ったことが起きました。

ナナが朝ごはんを食べてくれません。

店員さんに教わった作り方で出しても、全く口にしなかったのです。

ただ、この時は

「子猫は引っ越しのストレスで、一時的に食欲が無くなることもあります」

店員さんから契約の時にそう言われていたので、

「ああ、新しい環境に慣れてなくて不安だから食べられないのか」

そう思い、急かさず時間を置いて様子を見ることにしました。

 

30分ほど経った頃、ナナがご飯の皿に近づいてペロペロと舐め始めました。

ふやけたカリカリやウェットフードには口をつけず、粉ミルクが溶けて液体状になった水分だけ舐めていきます。

「食欲は戻ってないけど、ミルクの味は好きなのかな?」

心配ではありましたが、何も口にしないよりはマシかなとも考えました。

そしてミルクを舐めるナナに近づいて、背中をさすりながら

「大丈夫だよナナ。ゆっくり食べたらいいよ」

と声をかけました。

 

するとナナが尻尾をピーンと立てて、ふやけたカリカリやウェットフードを口にしました!

「ナナえらいねー!頑張ったねー!」

やはり新しい環境で不安だったのでしょう。

それから優しく声をかけて背中をさすっていると、ゆっくりゆっくり半分ほど食べ進めました。

「ご飯初回からショップの規定量を食べるのは難しいよね・・・」

この時は半分食べられたことを良しと思うことにしました。

 

お昼ご飯の様子も、朝と全く同じでした。

  • 自分からはミルクだけペロペロして、フードは口にしない
  • 私たちが声をかけて背中をさすってあげると、少しだけフードを口にする

私たちや環境に適応していくにつれて食欲も戻っていくだろうと考え、無理強いはせずに根気強く声をかけていくことにしました。

ちなみに、半分ほど食べるのに1時間弱かかりました。

その間ずっと声かけ撫で撫で必須。

声かけ撫で撫でが止まるとナナの食事も止まります。

一人では無理があるため夫婦で15分交代、マックス1時間としました。

 

食欲は心配なところもありましたが、ナナは好奇心旺盛で遊び好きでした。

「子猫は成長のために16〜20時間は寝させてください。遊びの時間は10分程度、多くても30分以内で」

店員さんからそう言われていたので、最初の2週間は1日10分だけケージの外に出すことに決めました。

猫じゃらしを見ると大興奮!!!

全力ダッシュで追いかけます!

他にもパソコンチェアの下に隠れたり、本棚の上に登ったり、水を入れているお皿に頭からダイブしてひっくり返したり・・・

体を動かすことが大好きみたいでした。

 

10分経ってもまだまだ走り足りなそうでしたが、

「今のナナは寝ることがお仕事。また明日も一緒に遊ぼうね」

ケージにそっと戻すと、しばらくは恨めしそうに大きく目を開いて私たちを見ていました。

けれど何分も経たないうちにケージ内のベッドで丸くなりました。

「「かわいいね〜〜〜」」

私たちにとって、とても幸せな時間でした。

 

夜ご飯も日中と変わらない食べっぷり。

規定量食べないことに不安を感じつつ、慣れるまで様子を見ようと無理やり自分自身に言い聞かせることにしました。

でも、私たちがご飯より悩んだのはナナのトイレ事情でした。

 

夜ご飯を食べ終えて(1時間夫婦で代わりばんこに声かけしてやっと半分の量です)しばらく、ナナが初トイレをしました。

店員さんから

「24時間経ってもトイレをしない場合は連絡してください」

そう言われていたこともあり、ナナの初トイレを喜びました。

・・・が、ここで問題が発生。

おしっこは問題なかったのですが、うんちが臭くて緩く量が少ないのです。

今日一日の食事の様子から考えると、量が少ないのは合点ができます。

でもうんちが緩いのは心配です。

契約の時店員さんからは

「うんちはコロコロで、全く問題ありませんよ」

そう言われてもいましたから。

 

ネットで調べてみたら、

  • 引っ越したばかりの子猫はストレスから緩くなることもある
  • 子猫のうんちすごく臭い!!!やばい!!!
  • お迎えして10日間はうんちが大変でした・・・

私たちと同じような悩みで検索した人がたくさん出てきました。

「やっぱり環境に慣れるまでは大変やね」

「一番きついのはナナだしね」

ましてや相手は小さな動物・・・焦ってしまっては自分たちもナナもキツくなる一方です。

「「今の環境に慣れるまで・・・」」

夫婦ともども初めての子猫ライフに戸惑いつつ、様子を見ていくことにしました。

 

お迎えして3日目の朝

いつものように声かけナデナデしながら朝ごはんを食べさせました(規定量の半分以下ですが)

けれど今朝は食欲よりも気になることがありました。

くしゃみを連発するのです。

抱っこしたらクシュン!食事中にクシュン!寝転がっていてもクシュン!

流石にこれは変だと思い、まずはペットショップに電話してみました。

 

「ああ、それは猫風邪ですね。子猫のうちは多いんですよ」

契約時に対応してくれた店員さんから言われました。

ちょうどいいと思い、食欲がなく言われていた規定量の半分も食べないことやうんちが緩いことも相談しましたが・・・

「引っ越しは猫ちゃんにとって大きなストレスですからねー。食欲が出ないのもそのためですよ」

「ショップではうんちは問題なかったですからね。一時的なものですよ」

「猫風邪のせいで食欲が出ないのかもしれませんし、一度病院で診てもらってはいかがですか」

と言われました。

元動物病院の看護師からそう言われ、もちろんナナの様子が心配でしたから、すぐに近くの動物病院へ連れていきました。

 

動物病院のドクターはくしゃみを連発するナナを見て、すぐに検査をしてくれました。

その結果判明したのは「コリネバクテリウム・ウルセランス」という常在菌が原因でした。

人獣共通感染症の一つです。

「猫風邪って簡単に使いますが、ウイルスがないと猫風邪にはならないんです」

そうドクターが訝しげに説明してくれました。

食欲不振や軟便のことも相談しましたが、

「ショップで万全だったのなら、今は一時的なストレスでしょう。環境に慣れてくれば自然と治りますよ」

ショップの店員さんと同じことを言われました。

「プロのショップの方やドクターまでそう言うなら、慣れるまで様子を見ていこう」

 

今にして思えば、ここが最初の分岐点となりました。

 

翌日から、ほのぼのとは程遠い戦いの毎日でした。

ご飯は毎回夫婦交代で1時間がかり。

それでも規定量の半分も食べません。

「ショップでは食べていたんだから、どうにかしたら食べるはず」

温める温度を変えたり、ふやかすお湯の量を変えたり、フードの量を変えたり、ミルクの濃さを変えたり、フードの種類を変えたり・・・

カリカリが嫌なのかと思い、様々なウェットフードも与えてみました。

けれどどれもナナにはヒットしません・・・

 

トイレは相変わらず軟便が続きます。

掻くのも上手じゃないため、2回に1回はうんちを踏んで大惨事です。

その度にナナの体を拭いて、部屋を掃除して、ケージを洗って・・・

くしゃみも病院からもらった点鼻薬をさすと治るものの、しばらく経つとまたぶり返します。

 

11月中旬に起きた明らかな体調悪化のサイン

そんな状態が1ヶ月ほど続いたあと、決定的な出来事が起こりました。

ナナが血便を出したのです!

「これは絶対におかしい!!」

はっきりとした確信を持って動物病院に駆け込みました。

動物病院で「猫下痢パネル」と言う検査を行いました。

ドクターから症状を聞かれ、軟便はお迎えした日から続いているが血便は初めて、と伝えました。

検査の結果が分かるまで数日かかるということで、この日は整腸剤と下痢止めをもらって帰りました。

 

検査から5日後、病院から検査結果が届いたとの連絡を受け、ドクターの元へ行きました。

結果は「トリコモナス・フィータス」の陽性。

回虫の一種で、猫の腸に寄生し胃腸障害を引き起こす厄介な原虫です。

トリコモナス・フィータス

今までの軟便症状や今回の血便、食欲不振などはこれが原因の可能性が極めて高いということでした。

ドクターから「ロニダゾール」という苦い薬を処方されました。

ご飯と一緒に〜と言われましたが、ナナは少食なうえ苦い薬を混ぜようものなら絶対口にしないと思いました。

そこでおやつ(ちゅーる)に混ぜて飲ませる、ということになりました。

ドクター曰く

「お迎えした日から軟便や下痢が続いていたとなると、ショップにいた時から持っていたと考えられます」

とのこと。

 

この「トリコモナス」の困るところは、

  • トリコモナスがついた糞便に触れると、そこから経口感染してしまうこと
  • 原虫が強く、なかなか落ちきれないこと
  • 症状が収まった(陰転した)としても、再発する可能があること

がありました。そこで、

  • 毎朝ちゅーるにロニダゾールを混ぜて飲ませる。
  • うんちをしたら、速攻で片付ける(常に軟便というか下痢)

を徹底しました。

猫は自分でお尻を舐めて綺麗にする習性があります。

トリコモナスがついた便を舐めると、再び経口感染を起こして駆虫されないため、うんちをしたら毎回必ずお尻を拭いていました。

 

1週間毎に動物病院でお薬の処方と経過観察を行いました。

ロニダゾールを投与し続けたおかげで、便の硬さも少しずつマシになり、臭いも弱くなってきていました。

年末に差し掛かったころ再度「猫下痢パネル」を行いました。

検査日は12月25日クリスマスの日。

結果は年明けになるということでした。

 

ナナとの初めての年越しは、怒涛の日々の中で過ぎていきました。

 

不妊手術を経て・・・

2023年、ナナを迎えて初めてのお正月

近くの神社に初詣に行き、私たち夫婦とナナの健康を祈願してきました。

この日はお正月ご飯として「帆立貝柱ご飯」をだしました。

目の色を変えて、一気に完食しました(この時が最初で最後の完全完食でした・・・)

 

1月6日(金)、動物病院から検査結果が届いたという電話がありました。

ドクターからは

「トリコモナス陰性ですよ。よく頑張りましたね!」

そう言われました。

「そうですか!本当に良かった・・・」

強い原虫と知ったいただけに、喜びもひとしおです。

これでナナも私たちも軟便とロニダゾールから解放される!と思いました。

 

トリコモナスが陰転したことで、ナナの不妊手術を行うことができるようになりました。

子猫の不妊手術は生後半年が目安とされています。

それより遅くなるとホルモンの分泌が進み、不妊手術の効果が薄れてしまうからです。

ドクターと相談し、1月中旬に不妊手術を行うことが決まりました。

トリコモナスが陰転して間も無く〜という不安はありましたが、もうすぐ生まれて半年になるというタイミングでもあったため、お願いしました。

 

さて、ロニダゾールとはサヨナラできたのですが、厄介な問題がまた浮き上がります。

そうご飯問題です。

お迎えした直後から少食・偏食かつ声かけナデナデがないと口が動かなかったナナ様(この頃になると、その傍若無人な振る舞いから家では様付けしてました)

毎朝のちゅーるwithロニダゾールライフが2ヶ月近く続いたせいで、ちゅーるの美味しさを完全に知ってしまいました。

こうなってしまっては

「朝ごはんはちゅーるでしょ?でないと私、食べないわよ?」

偏食っぷりに磨きがかかりまくりです。

 

ここからはナナ様の食べられる食探しの日々です。

あらゆるペットショップやショッピングモール、PVフードを試しました。

一般的に市販されているものの、ほとんど全てを試したと思います。

カリカリからウェット、缶詰まで。

けれど結局のところ、ちゅーる以外にヒットするものはありませんでした。

たまに口にすることはあっても、半分食べることが珍しいレベルでした。

しかもナナ様の気分によって、同じちゅーるですら味の違いで食べないことも出てきました。

もう私では完全にお手上げ状態・・・

妻がナナ様のご機嫌を伺い、その日の気分を感じ取って、ちゅーるの味を見極めてお出しする。

そんな緊張感に溢れたご飯となっていったのですw

 

1月17日(火)ナナの不妊手術

術前検査の時の体重が2キロちょうど。

お迎え時が1.05キロでしたから4ヶ月で倍になったとはいえ、月齢平均よりかなり軽い体重です。

トリコモナスに感染していたことと日々の少食・偏食・・・

ドクターが心配されていたのは、全員麻酔による死亡のリスクでした。

とは言え、時期的な問題やナナの日頃の食事の様子から、延期したとしても体重の増加は期待できそうにありません。

ドクターを信じて手術を行なっていただきました。

不妊手術

 

術前の血液検査でも大きな異常はなく、翌日手術は無事に成功しナナが手術着姿で帰ってきました。

「「よく頑張ったねーー」」

全身麻酔からの後遺症も見当たらず、よく乗り切ってくれたと感動しました。

 

不妊手術を終えて、ナナの様子が一つ大きく変わりました。

あれだけ軟便(トリコモナスは駆虫できましたが・・・)だったうんちが、手術以降コロコロになったのです!

これには夫婦揃って目玉が飛び出しそうなくらい驚きました。

偏食は相変わらずのままでしたがw

 

2月は比較的穏やかな生活を送ることができました。

うんちはコロコロと軟便が行ったり来たり・・・

食事に関してはまさにナナ様仕様で、妻が毎回的確に判断して調節していました。

ウェットの中でもゼリー状のものがお好みと分かっているきましたが、少し口をつけて

「・・・プイッ」

と食べ残すことも日常茶飯事でした。

寒いのが苦手なんでしょう、よくコタツの中で寝ていました。

気づかずに足を突っ込むと

「にゃっ!!!」

と叫び声をあげて抗議してきました。

 

ナナ様はちゅーる生活で

自分はこの家で一番尊い「神様」のような存在に違いない

と思っていたはずです。

まさに天上天下唯我独尊・・・わがまま放題に育ちました。

 

人間の側にはいたい。

でも触られるのは嫌。

触りたい時は自分から触りに行く。

人間が調子に乗って抱っこしようとすると逃げていく。

何かを訴えるように見上げてくる。

その時忙しくて相手にできないと拗ねる、とことん拗ねる。

話しかけても近づいても完全ガン無視。

自分の機嫌が治ったら自分から近づいてくる。

でも触られるのは嫌。

ご飯もその時食べたいものを察知して提供しないと食べない。

そもそも朝ちゅーるがないと1日ずっと激おこぷんぷん。

「「それでも、このまま元気でいてくれたら・・・」」

夫婦ともに願いは同じでした。

 

3月のはじめ・・・急変の始まり

妻がこんなことを言い出しました。

「ねぇ、最近なーちゃん(ナナ様の最新の呼び名)震えが酷くなってない?」

私はそこまで感じなかったのですが、妻は機敏に感じ取っていたようです。

「もともとお迎えした時から、たまに震えがあったのよね」

「最初は寒いからと思ってたけど、最近頻度が増えてきてる気がする」

この震えは常に起きているわけではなく、ふとしたときに全身をブルっと震わせていました。

「それに、瞬膜が出てるの」

確かに、ナナの目元には薄い膜が出ていました。

猫は体調が悪いときに瞬膜が出る、とネットにも書いてありました。

 

3月14日(火)

かかりつけの動物病院を受診しました。

この時点では他に大きな異常がなかったこともあり、しばらく様子を見ることに。

ただ体重が1.8キロと不妊手術の頃よりも減っていたため、栄養補給のためAD缶を処方されました。

「このAD缶は、どんな猫ちゃんでも飛びついて食べますよ」

ドクターにそう言われ期待して食べさせてみましたが、案の定というかナナ様はお食べになりませんでした。

そのまま体調を見ながらの日々でした。

瞬膜は一向に収まらず、体の震えの頻度は確かに増えてきていました。

 

3月17日(金)

病院を受診してからすぐ、ナナの歩き方が変になりました。

2月までは普通にジャンプして飛び乗っていたソファに、飛び上がれなくなったのです。

もともと鈍臭くてキャットタワーから落ちることも今までありましたし、食が細く筋肉も少ないためあまり活発に動き回ることもなくなりました。

けれどソファに上がれないということは初めてでした。

抱えてソファに座らせてみても、今度は降りるときの着地がうまくできません。

後ろ足に力が入っておらず、「ドスン!」と尻もちをつくような格好になります。

また普通に歩いている時でもふらついています。

  • 震え
  • 瞬膜
  • 後ろ足の麻痺

私たちの脳裏に初めて「FIP」がよぎりました。

一方で、トリコモナスの駆虫薬「ロニダゾール」には副作用として神経症状が現れることもあると説明されていました。

今回の後ろ足の麻痺は薬の影響ではないかという希望を信じることにしました。

 

かかりつけの動物病院を再度受診。

瞳孔の大きさや瞳の左右差はなく、腹水も溜まっていないことからFIPは違うだろうという見立てでした。

ネットで

FIPが疑われる場合、MRIで診断する

とありましたから、ドクターに相談して診ました。

「MRIは全身麻酔で行います。子猫・・しかも今のナナちゃんの体力では全身麻酔をかけてまでMRI検査はお勧めしません」

そう説明されました。

後ろ足の麻痺は明らかでしたが、この時点ではFIPであるという決め手に欠け、様子見ということになりました。

 

3月18日(土)

ついに後ろ足が全く動かなくなりました。

もうかかりつけの動物病院では埒があかないと思い、別の動物病院を受診しました。

そこでもFIPと診断するには決め手に欠けるとのことでした。

後ろ足の麻痺は、

  • 骨か筋肉の炎症
  • 腰を触ったときに痛がっているから腰骨の異常(ヘルニア?)

の可能性があると言われました。

そこで消炎鎮痛剤の注射をしていただき、1日様子を見ることになりました。

帰宅してしばらくすると、ナナが元気に歩き始めました。

歩くどころか、ソファに飛び乗るわリビングを走り回るわキャットタワーを駆け上がるわ大騒ぎ!

「鎮痛剤が効いたね!骨か筋肉に炎症があったんだ!」

瞬膜は出たままですし、たまに震えはありましたが、ナナが普通に行動できることに大喜びでした。

けれど鎮痛剤が切れた翌日から、ナナの後ろ足は再び動かなくなりました。

 

3月20日(月)

お昼ご飯を食べ終わったあたり、ナナがこの日一度もトイレをしていないことに妻が気づきました。

「なーちゃんが全然トイレしてない!」

具合が悪くなったここ1週間、ナナはご飯をほとんど食べられていません。

かろうじてちゅーるだけは口にしてくれるのですが、固形物はほとんど手付かずなのです。

サードオピニオンの意味もあって別の動物病院を受診しました。

そこでドクターに言われたことは・・・

「膀胱にたまってないですね。どこかでしてますよ」

「「え???」」

まさに青天の霹靂、予想だにしなかった答えが返ってきました。

とにかくトイレは帰った後に部屋の隅々までチェックするとして、瞬膜と麻痺のことも診てもらいました。

ここでもFIPは否定され、以前消炎鎮痛剤を注射した日に元気を取り戻したことを踏まえて

  • 恐らく足か腰の骨または筋肉に炎症が出ている
  • 鎮痛剤で痛みがなくなったと思い、思い切り走り回ったから炎症が進んだ

という可能性を示唆されました。

簡単にいうと

「痛み止めで治ったと勘違いして調子に乗ったら、余計に悪化させちゃった」

ってことですね。

これで済めば楽なもの、とばかりにホッと安堵したことを覚えています。

ちなみにトイレの隅っこで用を足した形跡が見られ、夫婦で

「「なーんだ、よかったぁ」」

とこの日は安心したものでした。

 

3月21日(火)

ナナの様子は悪化の一途を辿るばかりでした。

なんとかしてやりたい

いても経ってもいられず、スマホで猫の病気を調べているうちにエコー検査が引っかかりました。

「なーちゃんは内臓とかのエコー検査って受けたことなかったよね」

エコーなら全身麻酔もありません。

これで何か分かれば・・・願いを込めてかかりつけの動物病院へ行きました。

 

動物病院では、血液検査と腹部エコー検査をしていただきました。

エコー検査1

エコー検査2

後ろ足の麻痺は明らかなものの、エコー検査でははっきりとした異常は見当たりませんでした。

血液検査では「グロブリン」という蛋白質の値が基準値を超えていました。

これは炎症や腫瘍ができていると上がるもので、ナナの身体状況から何らかの炎症が起きていることは間違いなく、あまり気にしなくていいと言われました。

仮にFIPならば、グロブリンの値がこれよりはるかに高くなるはず、とのことでした。

結局、いつも通りというか「様子見」で終わりました。

 

夕食後、ソファにナナを座らせてテレビを見ていました。

ナナが自分でソファへの上り下りが難しくなって以降、妻が定期的にケージへと戻しトイレをさせていました。

今回もいつもの感じでナナをトイレに連れて行こうと抱え上げたとき、ソファの上でおしっこをしていたことに気づきました。

「我慢できなかったかぁ、気づかなくてごめんねー」

そう話しながら妻はナナの体拭きとトイレへの誘導、私はソファの消毒・清掃を始めました。

これを機にナナはオムツを使用することになりました。

自分の意思で動くのが難しいため、この失敗はしょうがないか・・・

この時はそう思っていました。

 

時刻が0時近くになりそろそろ寝ようかとしていたところ、妻の声がリビングから聞こえてきました。

「なーちゃんが、うんち我慢できなかった!」

最初は何が起こったのか分かりませんでした。

妻に状況を聞いたところ、ケージに戻そうと抱っこしたら、その態勢のままうんちを出してしまったというのです。

夕食後のおしっこに続いてうんちまで・・・

心配と驚きでパニック状態です。

ナナの状態をよく見ると、麻痺が左前足まで進んでいる感じもありました。

ことは急を要すると感じ、夜間に診療してもらえる救急病院をスマホで探しました。

片っ端から電話をかけていくと、車で2時間ほど離れた動物病院が事情を聞いて診てくれることになりました。

私たちはナナを連れて車を走らせました。

 

3月22日(水)

動物病院に到着した時には午前2時ちょいでした。

ドクターにこれまでの経過や病院での検査結果を伝え、ナナの様子を見て一言

「どうして病院はもっと早くMRI診断をしなかったのか!麻痺という神経症状が出ている時点で脳の異常を疑うのは当然のことです!」

と言われました。

それからドクターは

  • 完全にFIPという診断が下りるほどの症状は出ていないが、その可能性が低いことはない
  • MRI検査は設備のある大きな病院で、予約をとっていかないと実施することができない
  • ここではMRI検査はできないが、血液検査である程度のことを調べることはできる

と説明してくれました。

この時点で両後ろ足は完全に伸び切っていて、左前足も反射反応すらおぼつかなくなっていました。

私たちはMRI診断の予約手続きと、血液検査をお願いしました。

 

深夜の無理を言った訪問なため看護師さんはおらず、私たち自身でドクターのお手伝いをすることになりました。

採血では後足の太い血管に針を刺します。

当然ナナが暴れてしまうため、私は頭を妻は体を押さえつけます。

月齢8ヶ月の平均体重より500グラムほど軽いナナの体からは思ったように血が抜けず、左右両方から採血することになりました。

相当痛いのでしょう。

さっきまで麻痺していた四肢にもの凄い力が入り暴れます。

泣きそうになるのを堪えながら、三人で採血を終えました。

「MRI予約は朝になったらすぐに入れます。できるだけ早くがいい。お仕事は大丈夫ですか?」

「大切な家族です、いつでも大丈夫です。よろしくお願いします」

深夜にも関わらずとても丁寧に対応していただいたこと、ナナのために一生懸命考えて動いてくださったこと、本当に感謝しかありませんでした。

帰宅したのは午前5時を回ったところでした。

「あのドクターは今から通常通り診察かぁ・・・申し訳ない・・・」

そんな話をしながら、少しだけ眠ることにしました。

 

お昼頃、妻に電話がありました。

夜中診てくださった動物病院からです。

「明日23日の11時からMRI検査の予約が取れました」

おそらく無理を言って急いでもらったのでしょう。

こんなに早くMRIの予約が取れるなんて考えもしていませんでした。

「血液検査の結果は2〜3日後には出ます。希望を捨てずに頑張ってくださいね!」

ご自身とても疲れているでしょうに、とても温かいお言葉をかけていただきました。

ドクターにお礼を言い、明日の検査を待つことにしました。

 

FIPとの診断

3月23日(木)

すでにナナは動くことはもちろん、首を持ち上げることも困難になっていました。

午前11時、MRI検査をしていただく動物病院に着きました。

コロナ禍ということで、妻がナナを連れて診察室へ入りました。

30分ほどして車に戻ってきました。

そこで衝撃的なことを聞かされました。

「MRIの結果を診て確定診断にはなるが、FIPで間違いないだろう」

「四肢の麻痺、排泄困難、随意反応の悪さ、体重・・・今までFIPで診てきた猫ちゃんと同じ症状です」

「ナナちゃんの体力からみて、全身麻酔から目が覚めないことも十分考えられます」

「MRI検査でFIPが疑われた場合、脳の髄液を採取して精密検査に出します」

MRIには2時間ほどかかるらしく、終わり次第電話がくるとのことでした。

 

FIPのタイプと特徴

ウェットタイプ腹水が溜まる発症からの進行が早く、1ヶ月以内の致死率が高い
ドライタイプ腹水が溜まらない発症からの進行が遅く、半年ほどで死に至ることが多い

一般的には腹水が溜まるウェットタイプが全体の9割ほどだそうです。

ナナのようなドライタイプは稀で、かつ神経症状まで出てくるとほぼ助からないとのこと。

ここで言う「発症」とは猫の体内でFCoVウィルスがFIPVウィルスに変化し出した時点のことであり、腹水や神経症状が見られた時にはすでに「末期症状」と言うことです。

健診の時以外で、元気な時にMRI検査を受けるなんて人でも動物でもしませんよね。

FIPが助からない、と言われているのは強毒性だけではなく「早期発見の難しさ」にあるとつくづく感じました。

 

ふと頭に次のような考えが浮かびました。

ナナのFIP発症はいつなのだろう?

MRIや血液検査でわかるのは「FIPウィルスに感染しているかどうか」であり「いつから発症していたか」は分かりません。

そもそも現代の獣医学を持ってしても、FCoVウィルスがFIPVウィルスに突然変異する理由は解明されていないのです。

どこの動物病院のドクターにしてもペットショップの店員さんにしても、ある共通の言葉を言われます。

それは

ストレス

が原因の一つということ。

 

だったらナナにとってのストレスとは何だったのだろうか?

引っ越しと言う環境の変化?

でもそれならほとんど全ての猫(動物)が経験するわけで、FIPの発症率10%程度と合致しません。

それなら・・・

 

トリコモナス!!!

 

思い当たるものがこれしか浮かびません。

お迎えした日から軟便・下痢を繰り返し、駆虫完了まで2ヶ月以上かかりました。

再感染しないよう、トイレの後は毎回お尻を拭いていました。

これも大きなストレスだったと思います。

思い返せばお迎えしてきて3日目の朝、くしゃみを連発するナナを動物病院へ連れて行った時に軟便のことをドクターに相談しました。

けれどその時は

「ショップでコロコロだったなら、今は環境が変わった一時的なストレスですぐに元通りになりますよ」

そう言われ検査もされませんでした。

あの時無理やりにでも検査をお願いして、もっと早くトリコモナスの治療を始めていれば・・・

そもそもショップにいた時からの感染だったとしたら、本当にコロコロしていたのだろうか・・・

うちに来てから1回も規定量のご飯を食べなかったが、ショップでは食べていたのだろうか・・・

私たちはナナのFIP発症の原因を知ろうと思い、ショップへ電話をしました。

 

責任者とのやりとり・・・

ショップに繋がると若い店員さんが応答されました。

責任者の方に代わっていただき

  • ナナをお迎えする前(ショップにいたとき)の様子はどうだったのか
  • 店員さんは契約の時「健康面の問題はない」と言っていたが事実だったのか
  • ドクターが「トリコモナスはショップにいた時から感染していた可能性が極めて高い」との診断だがどのように考えるのか

この3点を尋ねてみました。

責任者の方からは

  • 体調に問題はなかった
  • 対応した店員は元動物病院の看護師で、信頼と実績があり対応も適切だった
  • ショップにいた当時、うんちはコロコロと聞いている。トリコモナスなはずはない

と言われました。

最後には

「死んだら死亡補償分の金額をお支払いしますよ」

何かがプツッと切れた瞬間でした。

ナナは今全身麻酔をされて、命懸けで検査しているのに!

「この人じゃ話にならない。もっと上の立場の人とじゃないと」

私はショップの本社に電話をかけ、受付をされた方にことの経緯をお話し、責任ある立場の方から連絡が欲しいと言う旨をお伝えしました。

 

MRI検査を終えて

そうこうしているうちに、MRIが始まってから3時間が経ちました。

予定より遅いことに戸惑いつつも、これまで電話がないことで全身麻酔での死亡はないのだろうという複雑な思いもありました。

午後3時を回ったところで病院から電話がありました。

妻は結果を聞くのが怖いから、というので私が行くことになりました。

 

診察室に入ってドクターと挨拶をし、最初にMRIの写真を見せていただきました。

MRI

脳の半分近くに溜まった水・・・

堪えきれなくなり、頸髄から胸腰髄にかけて拡散した高ウイルス反応・・・

「脳から採取した髄液からFIPウィルスが検出されて確定ではあるが、このMRI画像から判断するに間違いなくFIPです」

 

自分の中でも「もしかしたら・・・」という予感はありました。

でも、これまでいろんな動物病院のドクターに診ていただいて、

「FIPだという決め手に欠けます」

「仮にFIPだとしたら、もっと高い数値が出るはずです」

「消炎鎮痛剤で動けるようになったのなら、神経症状ではなく骨や筋肉の炎症でしょう」

そう言われていたものですから、「もしかしたら・・・」の希望もありました。

 

四肢の麻痺は脳に溜まった水が脳を圧迫し、神経症状を引き起こしているという見立てでした。

腹水が溜まらない「ドライタイプ」と呼ばれる珍しいFIPでした。

「完治は極めて稀な病気です。治療薬はありますが、日本では認可の下りていない薬となります。かかりつけのドクターと相談して、治療方針を決めてください」

文章にすると伝わりませんが、ドクターはとてもあたたかい方で、涙を堪えきれない私を励ましてくださいました。

診察室を出る時

「お辛いでしょうが、頑張っていきましょう。ナナちゃんのためにも、飼い主さんご自身が健康に気をつけてください」

 

車に戻り、妻に一部始終を話しました。

感情がぐちゃぐちゃで、虚無感だけが残っていました。

「まず家に帰ろう」

30分ほど経って妻が少し落ち着いたタイミングで車を出しました。

「これからどうしていくか、考えていかないと・・・」

心の中でそう呟きました。

 

意外な人物からの連絡

夕方、見た事のない電話番号から電話がかかってきました。

ショップの本社からかな・・・と思いながら出てみると予想通り。

けれど電話の先にいる人は、私たちの想像をはるかに超えた立場の方でした。

社長本人だったからです。

社長は開口一番

「この度は弊社のスタッフが心無い対応をして多大なご迷惑をかけたこと、本当に申し訳ありませんでした」

そう言われました。

社長自身が猫好きで猫飼いと言うこともあってか、私たちの話をしっかりと聞いて受け止めてくださいました。

電話の最後

「困ったことがあれば遠慮なく仰ってください。会社の社長として、猫好きな人間として必ずご協力します」

ショップの店員さんや責任者の方への不信感も吹き飛ばす、とても力強いお言葉でした。

 

3月24日(金)

MRI検査から一夜明け、気持ちの整理がつかないままお昼を迎えた頃に電話がありました。

22日の深夜に診ていただいた動物病院からです。

「血液検査の結果が届きました。お時間のある時に来院されてください」

家にいてもナナのことで気が滅入るばかりでしたし、気分転換も兼ねて検査結果を受け取りに行くことにしました。

 

ドクターにMRI画像を見せ、診察室で聞いたことをそのままお伝えしました。

驚き半分納得半分といった複雑な表情をされ、検査結果を見せてくださいました。

FIP血液検査1

FIP血液検査2

以前の検査で高い数値の出た「グロブリン」の精密検査です。

FIPではこの「γ-グロブリン」が高くなるそうです。

正常な波形と比べると、確かにナナのγ-グロブリンは基準値よりも高くなっていました。

また「FCoV抗体値」が1600倍と(基準値は400倍)基準値の4倍を示していました。

このFCoVという弱毒性のウイルスが突然変異を起こし、強毒性のFIPVウィルスに変化すると発症するのがFIP(猫伝染性腹膜炎)です。

髄液検査の結果でウィルスが検知されての確定となりますが、FIPであることは間違いないようでした。

「FIPの薬を取り寄せることもできます。ただFIP自体の完治が難しいうえにドライタイプは再発が起こりやすいです」

「認可が下りていないため高額になります。また継続して投与しなければ効果がないため、ナナちゃんの体力にもよります」

ドクターはとても親切に、詳しく薬の特徴や使用するとどうなるのか説明してくださいました。

すぐに結論を出せそうになくて、この日は血液検査の結果だけいただいて帰宅することにしました。

 

ナナとの別れと明らかになった事実

3月25日(土)

もうナナは動くどころか、自分で体を起こすことすらできなくなりました。

正直私も妻も

「「もう長くない・・・今日か明日にでも・・・」」

そう思わざるを得ないほど衰弱しきっていました。

薬を飲ませて治療していくなんて、到底できるはずのない状態でした。

ナナに神経症状が現れてから10日間ほどしか経っていません。

FIPとはこんなにも早く悪化していくものなのか

未知の経験に理性も感情も全然追いついていませんでした。

 

「・・・あの社長さんに電話してみよう」

MRI検査の日にお電話で話したあの方です。

「あの人だったら、話をしっかり聞いてくれる」

そんな気がしたのです。

 

数回コールすると、すぐに出てくださいました。

私たちのことを覚えていてくださり、MRI検査の画像や血液検査からFIPでほぼ間違いないことをお伝えしました。

衰弱しきったナナを見ながらどうすればいいか尋ねると、少し考えた後

「・・・私がナナちゃんを引き取ります」

そう言われました。

「FIPの最期は壮絶です。私は仕事柄猫ちゃんがFIPになった最期を看取ったことがあります。でも初めての室内飼いの猫ちゃんがFIPで最期を看取るのは本当に辛いことです」

「少しだけ考える時間をください」

そう言って一度電話を切りました。

社長の申し出は私たちのためを思って言ってくださったのだと分かります。

けれど苦しんでいるナナを看取らず責任放棄することも抵抗があります。

悩みましたが、ナナが一気に弱り出したここ10日間ほどで私も妻も疲れ果てていました。

特に妻の憔悴はひどいもので、このままナナを看取ると妻の体調がどうなるか大きな心配でした。

「・・・ナナをあの人に預けよう」

私がそう決断し、再度社長に電話をしました。

 

その日の夜、社長自ら自宅までナナを引き取りに来てくださいました。

ナナをお迎えした日から今日までの出来事を、駐車場でかいつまんでお話ししました。

社長の車の助手席にナナを乗せた時、全く動かせなかった首を少しだけもたげました。

けれどすぐにぐったりとなり目を閉じました。

「やっぱりもう長くない・・・」

三人とも同じようなことを考えていたと思います。

「多分長くないと思います。勝手なお願いですが、葬儀は私たち自身で行いたいのでその時が来たらご連絡お願いします」

社長は「分かりました」と言われ、深々とお辞儀をされたのち車を出されました。

 

社長にナナを渡してからは、葛藤と後悔とその他いろいろな感情が渦巻いていました。

  • どんなに辛くてもナナを最後まで看取ったがいいのではないか
  • けれどこのまま弱っていくナナを見ていると、自分たち(特に妻の)体調が心配
  • 最期を他人に託したのに葬儀は自分たちで行いたいなんて、ただの身勝手な行為ではないか

ただこの時は

もうじきナナが死ぬ

その悲しみに向き合う勇気がわいてきませんでした。

 

3月26日(日)

ナナの様子が気になって社長に電話しました。

お忙しいにも関わらず、毎回必ず出てくださいます。

「ナナちゃん、ずっと寝たままですね。部屋を暗くして静かな環境にして、様子を見ているところです」

私たちはナナの命が続いていたことに安堵しました。

社長は私たちのことも心配してくださり、まずは食事を摂るように言われました。

「ナナちゃんのことは私に任せてください。何かありましたらすぐにご連絡しますから」

その温かい言葉に救われて電話を切りました。

 

さらに翌日もナナの様子を尋ねました。

すると、思いがけないことを言われました。

「ナナちゃんがちゅーるを食べましたよ!それにふらつきはありますが、自分で動こうとしています」

これには驚きしかありませんでした。

2日前にお渡しした時の容体では、もって1〜2日としか考えられないほどだったからです。

しばらくナナの状況を聞いていると、妻が

「・・・なーちゃんに会いたい」

ぼそっと呟きました。

社長にそのことをお伝えしたら

「大丈夫ですよ。夕方、私が店長をしているショップまでお越し願えますか?」

そう仰ってくださいました。

 

約束の時刻の5分ほど前にショップに着きました。

妻はナナに会いたいと言っていましたが、私は会う気になれませんでした。

再度ナナを見てしまうと、別れが辛くなりそうだからです。

そこで私は車で待ち、妻だけがショップに向かいました。

妻がショップに入って30分ほど経った頃でしょうか。

妻から電話がかかってきました。

「お願い!ショップに来て!!少しだけでいいから!!!」

もしかしたら容体が急変して危ない状況なのか!?

あれこれ考えながらショップの中に入ってみると、妻がナナを泣きながら抱っこしていました。

「なーちゃんね、目が開いて尻尾が動くようになってるんだよ!」

私はどうゆう状況かついていけず、社長に話を聞きました。

「朝からちゅーるを5本食べているんです。昼頃からは自分で動き出して、自分でトイレもできたんですよ。私にも何が何やらさっぱりなのですが」

「FIPになった猫ちゃんを何度か見てきましたが、正直ナナちゃんは渡された時点で"助からない”と思いました」

「薬とか特別なことは何もしていないんです。ただナナちゃんが好きと聞いていたちゅーるをあげたら今朝から食べ出して」

信じられないことですが、明らかに前よりも元気になったナナが目の前にいました。

私もナナを抱っこして、この不思議な現象についてしばし話した後、ショップを後にしました。

 

3月27日(月)

少し元気が戻ったナナと再会した翌日、妻がこう言いました。

「ね、もう一回なーちゃんを引き取って、うちで看取ったらダメかな」

こちらの都合ばかりではありましたが、社長に掛け合ってみることにしました。

社長は

「全然構いませんよ。ナナちゃんも少し元気になりましたし。日中は仕事がありますので、昨日と同じ時間同じ場所でもよろしいですか」

快く承諾してくださいました。

 

夕方過ぎ、昨日ナナと再会したショップへ向かいました。

ショップには社長の他に、ナナのお世話を手伝ってくれていた女性スタッフの方もいらっしゃいました。

妻が女性スタッフとナナの様子を話している間、社長が小さな声で話してきました。

「・・・ナナちゃんの回復の理由は全く分かりません。もしかしたら初めての場所で緊張状態にあって、一時的に気を張っているだけかもしれません」

「FIPが治ったわけではないですし、いつまで元気でいられるか・・・奥様は大丈夫でしょうか」

「またナナちゃんが弱ってしまってお二人が大変な時は、いつでもご連絡してくださいね」

最後の最後まで私たちとナナのことを考えていただき、本当に頭が下がりました。

私は

「温かいお申し出ありがとうございます。この数日で心の整理がつきました。住み慣れた家でナナの最期を看取ってあげたいと思います」

社長と女性スタッフの方に見送られた私たちは、ナナを連れて3日ぶりに家に帰りました。

 

3月29日(水)

MRI検査をしていただいた病院へ、髄液検査の結果を聞くために電話しました。

髄液からウィルスが検出されると確定診断となります。

99%の諦めと1%の希望を持ってお話を伺いましたが・・・

 

「ナナちゃんの髄液からFIPVウィルスが検出されました」

 

やはりと言うか、ナナはFIPにかかっていました。

 

4月〜5月

ナナを再び引き取ってからの生活は、正直しんどいことがたくさんありました。

ご飯はちゅーるしか口にしません(偏食っぷりも健在で、その日の気分で食べたい味が変わりますw)

絶対的にカロリー不足・栄養不足になってしまいます。

そこで液体状の栄養食とサプリメントを混ぜて、シリンジで1日6回少量ずつ飲ませることにしました。

シリンジ

吐く回数も多くなりました。

ナナはFIPの症状が出るまでの約半年間で1〜2回しか吐いたことがありません。

それが、4月以降は数日おきに吐く姿が見られるようになりました。

多少動けるようにはなりましたが、四肢の麻痺は残り自由には動けません。

2時間おきにケージ(トイレ)へ連れて行き、できたらまたリビングに放す〜としていました。

脳に水が溜まる水頭症の影響なのか、性格や行動も変わりました。

以前はキャットタワーのてっぺんから窓の外を見て、風に当たるのが好きでした。

この頃は・・・体がきついのでしょう、ベッドで寝る時間が多くなりました。

 

それでもナナと一緒にいられる時間はとても嬉しく、大切でした。

FIPの治療をするかどうかも悩みましたが、しないことにしました。

その理由は

  • FIPの治療は長期戦で、猫自身の体力が必要になる(ナナの体力では厳しい)
  • ドライタイプは再発率が極めて高い
  • 神経症状にも現れ、MRIで脳の半分ほどがやられている
  • 未認可の薬なため、治療がとても高額になる

なにより

治療して延命させるのは飼い主の自己満足で、ナナにとっては苦しい時間が増えるだけなのではないか

動物は人間の言葉が話せないため、痛い苦しいは想像するしかできません。

仮に薬が効いて寿命が伸びたとしても、その間ずーっと痛い苦しい思いをするかもしれないと思うと、自然なままにしておこうという決断に至りました。

 

ナナ、空に帰る

5月下旬あたりから、明らかにナナは弱っていきました。

むしろFIPの治療を行わないまま、よくここまで頑張っているなと思ったほどです。

 

6月になると四肢は完全に動かなくなり、何も口にできなくなりました。

頭が激しく痛むのでしょう。

普段は動かせない後ろ足で、時折激しく耳の横を引っ掻きます。

痛みで寝ることもできないようで、1日中ずっと目を開いたままです。

「なーちゃん、もう休んでいいんだよ。目を閉じて寝ていいんだよ」

何度も何度もそう言いながら手で目を閉じようとするのですが、絶対に目が閉じません。

 

2日には全身の痙攣が頻繁に起こるようになりました。

口からは泡を吹いて、呼吸もしにくそうです。

「なーちゃんは綺麗好きだもんね。毛繕い上手だもんね」

妻が体をウェットタオルで適宜拭いていました。

 

3日は反射反応もなくなりました。

目の前で手を「ぱちんっ!」と鳴らしても反応がありません。

1分間の脈拍は30ないほど・・・体は痩せこけて骨が浮かび上がっていました。

時々ナナの呼吸が1分ほど止まります。

けど再び小さな呼吸が戻って〜の繰り返しです。

目は絶対に閉じません。

丸三日は寝ていないことになります。

 

そして6月4日(日)20:25

ナナは空に帰りました。

ちょうど妻が夕食を作ろうとした瞬間でした。

「なーちゃん、今なら側にいるよ。これから夜ご飯作らないといけないの。もうね休んでいいんだよ。ご飯作りに行くよ?」

そう話した途端、ナナの体が大きく痙攣しました。

1、2、3・・・10回ほどの大きな痙攣。

目を見開いて、爪を立てて、足をピーーーンと伸ばして・・・

やっとナナは痛みや苦しみから解放されました。

 

翌日、家の近くのお寺がペット葬儀をされていると知ったので、ナナの葬儀をお願いしました。

あれだけFIPで苦しんで、少食で体も弱かったのに、骨は綺麗でした。

のど仏も全く欠けることなく残っていました。

「なーちゃん、きつかったね、よく頑張ったね。生まれ変わったら、また私たちのところにおいでね」

 

事実

ナナの葬儀が終わったところで、お世話になった社長にも一部始終をお伝えしました。

それと同時に、あることをお願いしました。

それは

ナナのショップでの様子の真実を知りたい

です。

私たちはたくさんのドクターの見解や、いろんなショップでたくさんの子猫を見てきた経験から

絶対にナナはショップにいた時から少食で、軟便(トリコモナス)だった

と確信めいたものを感じていました。

 

契約時に店員さんが私たちに言った

「ご飯は規定量を問題なく食べていますよ」

「うんちも問題ありません」

これが本当だったと、どうしても思えなかったのです。

引き渡し時の体重が、生後3ヶ月で1.05キロしかないことも引っかかっていました。

社長もナナが発育不全だと感じていたらしく、「自分でその時対応したスタッフならびに責任者と話をする」とおっしゃってくれました。

数日後、社長から連絡がきました。

齟齬があってはいけないということで、口頭だけではなく書面での回答も送ってくださるとのこと。

そこで以下のような回答が得られました。

ショップでは規定量食べていたのか食べていない。少食なので食べるようにミルクを混ぜ、あげる回数を増やしていた
うんちはコロコロだったのか緩かった。子猫のうちはこんなものだと思っていた
なぜ検査しなかったのか問題ないと考えていた
 入荷した時から虚弱でスタッフ全員でマークしていた

おそらくナナは生まれつき体が弱く、食も細かったのでしょう。

そのため抵抗力がなく、コリネバクテリウムという常在菌でさえ体調を崩すほどに。

トリコモナスがいつどんな経路で感染したかは不明ですが、ショップにいた時から感染していたことは間違いなさそうです。

ナナは私たちと出会うずっと前から、大きなストレスにさらされていた

FIPになってしまったのも頷けます。

私も妻も、悲しみや怒りを通り越してただただ虚無感でした。

 

これから猫をお迎えする方へ

現在、我が家にはロシアンブルーのオスがいます。

ナナとは違って何でも食べて、コロコロのうんちをして、体重も月齢平均とほぼ同じです。

ショップでこの子を初めて見た時、ナナにはなかった「生命力」を感じました。

それは、たくさんご飯を食べてポンポンになったお腹だったり

店員さんが出したご飯を美味しそうに食べる姿だったり

おもちゃに飛びついて遊ぶ姿だったり

トイレに転がっていたコロコロのうんちだったり

抱っこした時のずっしりとした骨格や重みだったり

明らかに「健康体」であることが伝わってきました。

 

デビューしたばかりの子は(月齢にもよりますが)デビューできなかった理由があるのかもしれません。

体が痩せてお腹がぺたんこな子はご飯を食べられない何かがあるのかもしれません。

何度見ても寝てばかりの子は動けない苦しさがあるのかもしれません。

トイレや部屋が乱雑だったら店員さんの目が行き届いていないのかもしれません。

 

人間も猫ちゃんも後悔のないようにするために、お迎えをする前にはたくさんの猫ちゃんを抱っこしてみてください。

そうすると自然とわかってくるはずです。

「あ、この子健康だ」

「ちょっとこの子は体が弱いかな」

そうして運命を感じる子に出会ったときは、自信を持ってお迎えしてあげてください。

 

いつかナナの生まれ変わりが、私たちの前に現れてくれますように。

 

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ねぎま

九州生まれ・九州育ちの海好き猫好きHSP
今の仕事に限界を感じ、社会福祉士を目指して独学で勉強を始め、2022年合格できました!
2023年6月に愛猫ナナをFIPで失いましたが、マンチカンのポンちゃんとロシアンブルーのにこに日々癒されている昭和人です。

-ねこ日和