沈黙の脅威、高血圧:その症状、原因、そして対策のすべて
高血圧は、「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がないまま進行し、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞などの命に関わる病気を引き起こす恐ろしい病気です。
しかし、高血圧は適切な対策を講じることで予防や改善が可能です。この記事では、高血圧の症状、原因、そして具体的な対処法や予防法について、最新の医学的知見に基づき詳細に解説します。
高血圧ってどんな病気?
高血圧とは、安静時の血圧が慢性的に正常値よりも高い状態を指します。
- 正常血圧:収縮期血圧 120 mmHg 未満かつ拡張期血圧 80 mmHg 未満
- 高値血圧:収縮期血圧 120~129 mmHg かつ拡張期血圧 80 mmHg 未満
- 高血圧
- I 度:収縮期血圧 130~139 mmHg または拡張期血圧 80~89 mmHg
- II 度:収縮期血圧 140 mmHg 以上または拡張期血圧 90 mmHg 以上
血圧は常に変動するため、一時的に高くなっても必ずしも高血圧とは限りません。しかし、継続的に高い状態が続く場合は、高血圧と診断されます。
⚠️ 高血圧の症状:初期は自覚症状がないことも
高血圧は、初期段階では自覚症状がないことがほとんどです。しかし、放置すると血管に負担がかかり続け、様々な臓器に障害を引き起こす可能性があります。
- めまい:立ちくらみ、ふらつき、回転性のめまいなど
- 頭痛:後頭部やこめかみの鈍痛、ズキズキとした痛みなど
- 動悸:心臓がドキドキする、脈が速くなる、不規則に脈打つ
- 息切れ:少し動いただけで息苦しくなる、階段の上り下りで息切れする
- 肩こり:首や肩の筋肉が硬くなり、痛みや不快感を感じる
- 耳鳴り:キーンという高い音、ジーという低い音、セミの鳴き声のような音など
- むくみ:特に夕方になると足首や顔がむくむ
- 鼻血:鼻の粘膜の血管が破れて出血する
これらの症状は、高血圧によって引き起こされることもありますが、他の病気の可能性もあります。気になる症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。
高血圧の原因:遺伝、生活習慣、基礎疾患など
高血圧の原因は多岐にわたり、以下のような要因が考えられます。
- 遺伝的要因:両親が高血圧の場合、自分も高血圧になりやすい傾向がある
- 加齢:年齢を重ねるごとに血管が硬くなり、血圧が上がりやすくなる
- 生活習慣:
- 塩分の過剰摂取:食塩のナトリウムが体内の水分を保持し、血圧を上げる
- 運動不足:運動不足は肥満やストレスを招き、血圧上昇につながる
- 肥満:体脂肪が増えると、血管に負担がかかり血圧が上がりやすくなる
- ストレス:ストレスホルモンが分泌され、血管が収縮し血圧が上がる
- 喫煙:ニコチンが血管を収縮させ、血圧を上げる
- 過度な飲酒:アルコールの過剰摂取は、血圧上昇や心臓への負担を増大させる
- 基礎疾患:
- 腎臓病:腎臓の機能低下により、血圧を調整するホルモンのバランスが崩れる
- 糖尿病:高血糖が血管を傷つけ、動脈硬化を促進する
- 睡眠時無呼吸症候群:睡眠中の低酸素状態が、血圧上昇や心血管疾患のリスクを高める
- その他:薬の副作用、ホルモン異常、妊娠など
高血圧の診断:正確な測定と総合的な判断
高血圧の診断は、血圧測定と問診、血液検査、尿検査などによって行われます。
- 血圧測定:
- 家庭血圧:朝と晩に1日2回測定し、1週間分の平均値で判断する
- 測定方法:
- 排尿後、安静にして5分以上経過してから測定する
- 椅子の背もたれに寄りかかり、足を組まずにリラックスした状態で座る
- カフ(腕帯)を心臓と同じ高さに巻き、正しく装着する
- 測定中は話さず、動かない
- 1~2分間隔で2回測定し、平均値を記録する
- 測定方法:
- 医療機関での血圧測定:白衣高血圧(医療機関で測定すると血圧が高くなる現象)を考慮し、24時間自由行動下血圧測定や家庭血圧測定の結果と合わせて総合的に判断する
- 家庭血圧:朝と晩に1日2回測定し、1週間分の平均値で判断する
- 問診:
- 既往歴、家族歴、生活習慣、服薬状況などを確認する
- 血液検査:
- 腎機能、血糖値、脂質、電解質などを調べる
- 尿検査:
- 蛋白尿や糖尿など、腎臓の機能障害や糖尿病の有無を調べる
高血圧の治療:目標値を目指した個別化治療
高血圧の治療は、個々の患者さんの状態に合わせて、生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせて行われます。
- 生活習慣の改善:
- 減塩:1日6g未満を目標に、食塩摂取量を減らす
- 例:
- 薄味を心がける
- 加工食品や外食を控える
- 香辛料やハーブを活用する
- 減塩調味料を使用する
- 例:
- バランスの取れた食事:
- DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)
- 野菜、果物、全粒穀物、低脂肪乳製品、魚、豆類、ナッツ類を積極的に摂取する
- 赤身肉、飽和脂肪酸、砂糖を控える
- DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)
- 適度な運動:
- 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)を1日30分以上、週に3回以上行う
- 無理のない範囲で、継続することが大切
- 禁煙:
- 喫煙は血管を傷つけ、動脈硬化を促進するため、禁煙することが重要
- 節酒:
- 過度な飲酒は避け、適量を守ること
- 男性:1日20g以下のアルコール
- 女性:1日10g以下のアルコール
- ストレス解消:
- 趣味やリラックスできる活動を取り入れる
- 睡眠時間を十分に確保する
- 相談できる相手を見つける
- 減塩:1日6g未満を目標に、食塩摂取量を減らす
- 薬物療法:
- 降圧剤の種類や量は、個々の状態に合わせて医師が決定する
- 降圧剤の種類:利尿薬、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB、β遮断薬など
- 降圧剤は、血圧を下げるだけでなく、心臓、腎臓、脳などの臓器を守る効果もある
高血圧の予防:今からできること
高血圧は、生活習慣の改善によって予防できる可能性があります。
- 減塩
- バランスの取れた食事
- 適度な運動
- 禁煙
- 節酒
- ストレス解消
- 十分な睡眠
- 定期的な血圧測定
高血圧に関する参考情報
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 高血圧https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-001.html
- 日本高血圧学会https://www.jpnsh.jp/
まとめ
高血圧は、自覚症状がないまま進行し、命に関わる病気を引き起こす可能性があります。しかし、早期発見・早期治療によって、合併症を予防し、健康な生活を送ることができます。
日頃から血圧を意識し、生活習慣の改善に努めましょう。そして、気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。