前回までに「生活保護」分野の各種扶助や保護施設をまとめました。
今回は実際の生活保護における
- 人数や世帯数の推移
- 保護の種類別扶助人数
- 保護の開始や廃止
- 自立支援プログラム
保護の動向(現状)について4項目で整理していきます。
人数や世帯数の推移
人員の推移
- 1990年 バブル崩壊が見え始める(転機となる)
- 1992年以降〜減少から横ばいで推移
- 1996年後半〜緩やかに増加
- 〜直近5年間 緩やかに減少
人口比の割合で見ると、2019年データで1.64%となっています。
世帯数の推移
2005年 被保護世帯が月平均で初めて100万世帯を超えました。
2019年 163万世帯まで増加しました。
上記の通り、世帯数は人員と異なり増加傾向にあります。
なぜなら少人数世帯の急増による世帯数自体が増加していることが影響しています。
特徴的なのは
- 高齢者世帯における生活保護が増加し
- 母子世帯、障害者・傷病者世帯は減少傾向にある
ということです。
生活保護を受給する高齢者世帯の割合は約55%で、いかに多いかがわかります。
ちなみに「高齢者世帯」は
65歳以上のみの世帯か、これに18歳未満の未婚者が加わった世帯
のことを指します。
生活保護の受給期間
1〜3年未満 | 15.7% |
5〜10年未満 | 31.1% |
15年以上 | 15.0% |
2017年でのデータです。
保護の種類別扶助人数
上記のグラフから分かるように
- 生活扶助の割合が最も高く
- 住宅扶助
- 医療扶助
の順になっています。
また教育扶助が減少傾向にあることや、介護扶助が増加の一途を辿っていることも押さえておくべきですね。
保護の開始や廃止
生活保護費が予算の「どこに」該当するかというと社会保障関係費です。
メディアの報道で分かるように、社会保障関係費は2020年度に約36兆円となるなど一般会計の34%を占めています。
生活保護費も増加傾向にあり、支給の開始や廃止は予算面からみても重要です。
保護の開始
生活保護開始の最も多い理由は
- 貯金等の減少・消失(約40%)
- 傷病による(約23%)
となっています。
これらは完全に独立しているわけではなく、
傷病によって世帯主または世帯員が収入激減となったから
貯金等が減少・消失した
とリンクして関わっています。
従来の「多子低収入型」から「傷病無収入型」への変化といえます。
保護の廃止
生活保護廃止の最も多い理由は、
- 死亡(43.3%)
- 労働による収入の増加
- 失踪
となっており、亡くなるまで受給するケースが最多となっています。
一方で、傷病による支給開始が約23%であったのにのに対し、傷病治癒による保護廃止はわずか0.5%です。
自立支援プログラム
2005年に導入された「自立支援プログラム」は
- きめ細かな個別支援プログラムを個々の課題に適切に対応する「多様な対応」
- 自立を容易なものとする「早期の対応」
- 効率的かつ一貫した支援を行う「システム的な対応」
を目的として作られました。
これは多種多様な理由から増加している被保護者の要因を類型化し、必要な支援を組織的に行えるよう構築されました。
そして従来の予算事業ではなく法定化された事業へと遷移していきました。
- 2014年の生活保護法改正に伴う被保護者就労支援事業や被保護者就労準備支援事業
- 2015年の生活困窮者自立支援法に伴う生活困窮者就労準備支援事業
被保護者就労準備支援事業の利用者は
- 被保護者で社会参加に必要な基礎技能等を習得することで就労が見込まれる者
- 本事業への参加を希望する者
を対象としています。
主な内容として
- 日常生活自立に関する支援
- 社会生活自立に関する支援
- 就労自立に関する支援
の3つの被保護者就労準備支援事業があります。
また原則として
1名以上の被保護者就労準備支援担当者が配置されます。
まとめ
生活保護の人員と費用の比較
生活保護の人員 | 保護にかかる費用 | |
1位 | 生活扶助 | 医療扶助(全体の約半数) |
2位 | 住宅扶助 | 生活扶助 |
3位 | 医療扶助 | 住宅扶助 |
4位 | 介護扶助(常に上昇傾向) | 介護扶助 |
5位 | 教育扶助 | 教育扶助 |
ついでに保護開始と廃止についても
保護の開始 | 保護の廃止 | |
1位 | 貯金の減少・喪失 | 死亡 |
2位 | 傷病 | 収入増加 |
3位 | 失踪 |
次に続く
今回はここまでです。
繰り返しますが、生活保護分野は前回の
- 8つの扶助の種類と性質
- 保護施設の概要
ここが基本かつ重要領域です。
今回は「まとめ」に載せています保護の人員や費用の比較や、人数(世帯数)の推移などポイントを絞って整理しています。
「生活保護」分野としては「低所得者」領域が最後になります。
こちらについてはまた次回に