福祉6法、福祉8法で定められている日本の福祉。
今回から数回に分けて行財政と福祉計画についてまとめていきます。
行政
福祉行政
- 国が制度や施策を企画・立案
- 都道府県が調整
- 市町村が実施
という仕組みになっています。
1986年機関委任事務整理合理化法により、社会福祉施設への入所措置が、機関委任事務から団体委任事務になりました。
- 機関委任事務とは、国が都道府県知事や市町村長に委任させていた事務のこと。
- 団体委任事務とは、国から地方公共団体そのものに委任していた事務のこと。
1999年 地方分権一括法が成立し、それぞれ廃止・再編されました。
廃止後は
- 機関委任事務→法定受託事務
- 団体委任事務→自治事務
行政組織
国、都道府県、市町村、広域連合と4分類されています。
国の組織 | 厚生労働省を中心。付属に社会保障審議会がある。 |
都道府県の組織 | 地方社会福祉審議会があり、社会福祉士に関する事項を調査審議する。 |
市町村の組織 | 市町村児童福祉審議会があり、児童や妊産婦及び知的障害者の福祉を調査審議する。 |
広域連合 | 複数の自治体にまたがる広域的な行政事務の処理。 |
具体的に整理すると
都道府県は
- 福祉事務所
- 児童相談所
- 身体障害者更生相談所
- 知的障害者更生相談所
- 婦人相談所
この5つの設置が義務付けられました。
市町村は福祉事務所に関して
- 市と特別区は設置義務
- 町村は任意設置
また2003年の地方自治法の改正で、指定管理制度が導入されて「公の施設」管理を民間事業者もできるようになりました。
次は各施設について具体的に整理します。
福祉事務所
- 所長
- 指導監督を行う査察指導員
- 現業を行う現業員
- 事務を行う事務員
所員の定数は社会福祉法に基づいて条例で定められました。
児童相談所
都道府県や指定都市は設置義務。
- 医師(保健師)
- 児童心理司
- 児童福祉司
などが配置されます。
身体障害者更生相談所
都道府県に設置義務。
職員として、身体障害者福祉司の配置義務。
身体障害者の更生援助の利便と市町村の援護の実施を円滑に行う機関のことです。
知的障害者更生相談所
都道府県に設置義務。
職員として、知的障害者福祉司の配置義務。
18歳以上の知的障害者の医学的・心理学的及び機能的判定を行う機関のことです。
婦人相談所
売春防止法により都道府県に設置義務。
2001年DV法が制定され、配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすと定めれれました。
財政
福祉に関わる財政は、国・地方・保険料(利用者)の大きく3つ。
国の財源
一般会計と特別会計から構成されます。
- 一般会計は国の基本的活動を行うために必要な歳入及び歳出
- 特別会計は国が行う特定の事業や資金を運用
社会福祉における財源は、社会保障関係費として計上されます。
平均して一般会計歳出総額の約35%に相当しています。
地方の財源
国と同様に、一般会計と特別会計に区分されます。
地方の財源のうち民生費として計上されます。
内訳は老人福祉費(41.4%)社会福祉費(30.7%)児童福祉費(22.5%)生活保護費(3.1%)災害救助費(2.2%)
市町村で見ると、扶助費(生活保護に要する経費)が17.8%と高くなります。
地方の財源(歳入)で覚えておくことは
- 一般財源→約64%
- 国庫支出金→約31%
- 地方債
- その他
一般財源の中でも「地方税」がその内の4割、「地方交付税」が16%になっています。
保険料財源
保険料=利用者負担のこと。
まず応能負担と応益負担の2種類があり
- 応能負担は利用者の支払い能力で負担額が決まる
- 応益負担はサービス量に応じて負担額が決まる
という違いがあります。
社会福祉施設の財源と利用方式
そもそも社会福祉施設の運営費は、従来「措置制度」のもと措置費で賄われていました。
2000年 社会福祉法の改正により
- 措置方式
- 自立支援給付方式
- 事業費補助方式
- 行政との契約方式
- 介護保険方式
と細分化されることになりました。
措置方式
利用希望者の申し出や、職権により措置権者が調査・判定をして行政処分を行うこと。
措置権者は対象者の施設入所を委託し、措置委託費を支払います。
受託事業者は対象者にサービスを提供し、本人・扶養義務者の負担能力に応じた費用徴収になります。
自立支援給付方式
2013年 障害者総合支援法に基づく方式のこと。
利用者は市町村の支給決定を受けてサービスを利用。
本人・扶養義務者は利用負担額を支払い、市町村は介護給付費・訓練等給付費を支給します。
ただし、指定事業者が代理受領します。
事業費補助方式
利用者と事業者の直接契約のこと。
ただし、上記の自立支援給付方式と同様に市町村は事業者に対して補助を行います。
行政との契約方式
利用者は希望するサービスを選択し市町村に利用申請を行います。
市町村は選択された事業者にサービス提供を委託します。
市町村は本人・扶養義務者から利用負担額を徴収します(応能負担)
介護保険方式
市町村の要介護認定を受けてサービスを利用します。
本人・扶養義務者は保険料を負担し、事業者へ利用負担額を支払います(応益負担)
また市町村は介護給付費を支給し、事業者が代理受領します。
国と地方の財政関係
基本的には
- 国が直接運営する施設は国が全額負担
- 地方公共団体が直接運営する施設は地方公共団体が全額負担
- 場合により、国が地方公共団体の費用の一部を負担
ただし地方の財源悪化防止のため
2007年地方財政健全化法が制定され、財政の比率を公表することになりました。
財政悪化を招くと財政健全化計画または財政再生計画と個別外部監査が義務付けられるようになりました。
終わり
次回からは、保険医療についてまとめる予定です。
ここは「福祉行財政と福祉計画」分野なので「福祉計画」が残っています。
ただ保険医療はコロナ禍で関心が高いことと、社会福祉士対策だけでなく日常生活にも役立つ分野だからです。